岸田首相が新型コロナに感染し、今月30日まで療養されることになりました。
ただ、幸いにして症状は軽症のようで、岸田首相は公邸で療養しつつ執務はこなしているとのことです。
そんな岸田首相に、いち早く「お見舞いの電報」を送ってきた国があります。
なんと中国(習近平国家主席)です。
「一日も早い回復を願う。ことしは日中国交正常化50周年にあたり、岸田首相とともに新時代の要求に合致した日中関係の構築を進めていきたい」
こうしたメッセージが、米国などG7の国々よりも先に習近平国家主席から送られてきたのでございます。
そう言えば…
ペロシ下院議長の台湾訪問で米中関係に摩擦が生じた際、日本が米国寄りの姿勢をみせたことから、その報復的措置として王毅外相は林外相との会談を急遽中止にしたわけですが、その後、なぜか8月17日には一転し、中国の外交当局のトップである楊潔篪氏(中国共産党政治局委員)が秋葉国家安全保障局長との会談に応じています。
そこでも楊潔篪氏は日中国交正常化50周年に触れており、「台湾は切り離せない領土の一部である」と主張しつつも、「双方の友好協力が唯一の正しい選択」であり「中国の発展は地域・世界の発展を後押しする重要なエンジンである」と述べています。
現実には中国の経済的発展は彼の国の軍事的発展をもたらし、そのことが日本はもちろん、地域と世界にとって大いなる脅威となってしまったわけですが、楊潔篪氏の言う「エンジン」とはコロナ後の経済(ビジネス)のことを指しているものと推察します。
秋葉・楊会談は、夕食付き、飲酒付きでなんと7時間にも及んだらしいので、楊潔篪としては「言いたいことを本音ですべて言うぞ…」という会談だったのでしょう。
こうした背景を考えますと、おそらく中国(習近平国家主席)は秋の党大会前に日中首脳会談を行いたいのだと思います。
そして日本をつかって米国との関係改善をしたい、というのが本音なのではないでしょうか。
中国が今後とも経済的に発展するためには、どうしても米国との良好な関係が必要だと判断しているはずです。
ご承知のとおり、もしも中国の経済発展に「限界あり…」となってしまうと、14億人とも言われている人民を抑え込むことが困難となります。
それは、中国共産党が最も恐れるシナリオです。
なので米中関係を修復するため、その手先となって動いてくれそうなお人好し国家・日本に歩み寄りの姿勢をみせているのかもしれません。
ただ、日中首脳会談を行うにしても、習近平国家主席としては岸田総理を北京にまで引きずり出す必要があります。
今から50年前の9月25日、田中角栄首相が北京を訪問することで日中国交回復がなされました。
北京に到着した田中角栄首相が周恩来氏と握手をしている映像を観たことがあると思いますが、どうしても彼の国は朝貢外交の形式とらなければならない歴史的な事情があるわけです。
ゆえに、できれば9月25日に岸田首相を北京に迎えたい、というのが中国の本音なのではないかと思われます。
むろん現在の日中関係でそれを実現するのは極めて難しいことではありますが…
いずれにしても中国は“超限戦”を得意とする国です。
どのような外交アプローチがあろうとも、その意図を正確に分析し、我が国の国益に沿う対応をしてほしい。