本日の夕方(午後5時15分~)、今年に入って8回目となる『経済財政諮問会議』が官邸で開催されます。
議題は「経済財政政策と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」についてです。
きのう、その原案が報道されていましたが、どうやら例によってプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)の黒字化目標は堅持されるらしい。
唖然とするとともに正気の沙汰とは思えません。
そのくせ原案には「デフレ脱却」が明記されているそうな。
しかしながら、PBの黒字化目標を堅持したままデフレを脱却するというのは物理的に不可能です。
政府歳出に制約を設けてデフレという総需要不足を解消するというのであれば、貿易黒字を飛躍的に拡大させて需要を埋めるほかない。
ただその際、経済主体別の資金過不足は、海外部門による赤字だけで政府、企業、家計の黒字をつくることになります。
もしもそうなれば(現実にはあり得ないが…)、激しい貿易摩擦が生じることとなり、米国をはじめとする貿易相手国から「近隣窮乏化策」と認定され日本に対し厳しい報復関税や貿易規制が課せられるとともに、とりわけ日米関係は最悪な状態と化すことになるでしょう。
詰まるところ政府による需要創出(財政支出の拡大)以外にデフレを脱却する術はないわけですが、1998年以来あまりにも長きにわたるデフレ不況に慣れさせられてしまったせいか、政治家たちはもちろんメディアを含め日本国民の多くがデフレ問題を深刻に捉えてないような気がします。
デフレとは、潜在GDP(供給能力)よりも需要(名目GDP)が下回ってしまう経済現象です。
需要が低迷しつづけると倒産や失業が増え、例え失業しなくとも実質賃金が低下していきます。
現にそうなっています。
デフレが長期化すると世の中には次々と所得を稼ぐ機会を失った人たち、あるいは所得を減らされた人たちで溢れるわけで、彼ら彼女らは余計に消費や投資を減らすことになります。
するとまた需要が減る。
これがデフレ・スパイラルです。
企業だって需要が増えなければ投資を抑制せざるを得ません。
銀行貸出が増えないのはそのためです。
冒頭のグラフのとおり、デフレ・ギャップを埋めないかぎり、我が国の供給能力(人材、生産資産、技術)は年々毀損していくばかりです。
即ち我が国は着実にモノやサービスをつくる力を失っているわけで、これこそがまさに国力の衰退です。
名目GDPとは実はモノやサービスを購入するおカネの量を意味していますので、モノやサービスを購入するおカネの量が増えないと名目GDPは拡大しません。
例えば銀行預金やタンス預金が増えるだけでは名目GDPは1円も増えません。
つまり、誰かがおカネをつかってモノやサービスを購入してくれないかぎり名目GDPは1円たりとも増えずデフレは一向に解消されないのでございます。
信用貨幣論が示しているとおり、おカネとは負債の一形式です。
誰かがおカネを借りたとき負債(その反対には債権)が発生し、あるいは誰かがモノやサービスを購入したとき名目GDP(おカネという負債)が増えます。
何度も繰り返しますが、いまの日本経済はデフレ経済下にあり、おカネを借りる人、あるいはおカネを使う人が少ない状態にあります。
それ即ち、負債が足りないのと同じことです。
デフレ下に負債(赤字)を拡大できる経済主体は、通貨発行権を有する政府しかございません。
それを経済財政諮問会議は「政府は負債(赤字)を減らし、PBを黒字にします」と愚かな方針を決定します。
経済財政諮問会議のメンバーは、以下のとおりです。
議長 菅義偉(総理)
議員 麻生太郎(財務相)
同 加藤勝信(官房長官)
同 西村康稔(内閣府特命担当相)
同 武田良太(総務相)
同 梶山弘志(経産相)
同 黒田東彦(日銀総裁)
同 竹森俊平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社理事長)
同 十倉雅和(住友化学株式会社 代表取締役会長)
同 新浪剛史(サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長)
同 柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)