かつて制空権とは、他国の飛行機を寄せつけない空域を常に確保することを指していましたが、現在では空中給油機の機動性が高まったことなどもあって、常に敵を寄せつけない空域を維持することは実に困難です。
そのため最近では、制空権の代わりに「航空優勢」という言葉が使われています。
例えば、敵地に海兵隊や陸軍を上陸させるためには、航空優勢を確保しなければなりません。
航空優勢を確保した時間帯には味方が上陸できますが、敵に航空優勢を奪われている間は敵の上陸を許すことになります。
ゆえに、もしも台湾有事が起きた場合、先島諸島(宮古列島と八重山列島)の島々では、自衛隊と人民解放軍との間で取ったり取られたりといった具合に島嶼の奪取と奪還が延々と繰り返されることになるはずです。
お互いに局地的かつ、一時的にしか航空優勢を確保することができないからです。
その航空優勢を確保するために最も重要な兵器こそが「戦闘機」です。
空軍をもつ国が、ステルス性と機動性を備えた最新鋭戦闘機を配備しているのはそのためです。
いま世界では、古くなった第4世代の戦闘機を順次、第5世代の戦闘機に買い換える動きが加速しています。
我が国も例外ではなく、古くなったF15などの第4世代機を順次、F35(第5世代機)へと代替購入を進めています。
むろん米国のロッキードマーチンは、「今こそビジネスチャンスだ…」と言わんばかりにF35を売り込んでいるわけです。
しかしながら、意外にもF35の売れ行きはあまり芳しくない。
先月、イギリスで開催されたファンボロー国際航空ショーでもF35の売れ行きは悪かった。
F35の商売敵になっているのがユーロファイター・タイフーンです。
ユーロファイター・タイフーンは第4世代戦闘機であり、しかも配備されてから既に20年ちかくも経っており新しい戦闘機ではありません。
それでも、とりわけヨーロッパ勢がF35の購入を避け、ユーロファイター・タイフーンを購入しています。
ドイツはファンボローで35機のF35を購入しましたが、同時に15機のユーロファイター・タイフーンを購入し、50機すべてをF35にはしませんでした。
中東のカタールもF35を購入する予定でいたらしいのですが、ファンボローではユーロファイター・タイフーンを24機も購入しています。
アラブ首長国連邦もまたF35を購入せず、フランスの戦闘機ラファール(第4世代機)を購入しています。
F35が避けられている理由の第一は、なによりもF35の機体そのものの値段が高いこと。(1機で約100億円)
理由の第2は、F35のパイロットを養成するコスト、整備要因の育成コストが高いこと。
理由の第3は極めて政治的なもので、ユーロファイター・タイフーンの製造には欧州において10万人もの高技能労働者の雇用を創出しているため「自国の雇用を守るためにはF35など購入していられない…」というわけです。
なお、ユーロファイター・タイフーンは第4世代ながら、F35に比べ機体の汎用性が高く、様々な軍事ミッションに対応可能らしい。
今後もF35の売れ行きが悪いままだと、米国様から「しかたない、そのぶん日本が買え!」なんて言われかねないから心配です。