台湾有事、そのとき日本は…

台湾有事、そのとき日本は…

ペロシ米国下院議長の訪台とは、要するに引退間際にあるペロシ氏の個人的なレガシーづくりだろう。

「私が習近平の顔を潰してやったぞ…」と。

自然、顔を潰された習近平主席(北京)は面目を挽回しなければならない。

そのために新たな強硬手段にでるリスクが高まりました。

我が国にとっても実に迷惑な話です。

台湾有事は、米国がどこまで介入するかは別として、日本としては決して無関係ではいられない重要な国家安全保障上の危機です。(とはいえ外交上、日本の政治家が「台湾有事は日本の有事…」と軽率に発言すべきではない)

いざ中国が台湾を侵攻するとなると、まずは台湾への経空攻撃、周辺海域の海上封鎖、続いて海兵隊と陸軍による上陸作戦が行われます。

ここでいう周辺海域の海上封鎖には、台湾から僅か100キロほどしか離れていない与那国島など、与那国海峡はもちろんのこと、先島諸島(宮古列島と八重山列島)もまた封鎖対象になる公算が大きい。

当然のことながら沖縄の在日米軍も攻撃対象になるでしょう。

ロシアがウクライナ紛争をなかなか終息できないでいるのは、ウクライナ後方から米国が軍事物資を延々と補給し続けているからです。

補給が耐えないかぎり、戦闘は継続されます。

ゆえに中国が台湾を侵攻する際には、台湾への補給ルートを完全に断たねばならず、そのためには台湾海峡の封鎖のみならず、バシー海峡、与那国海峡、そのほか先島諸島などの島嶼群を完全に奪取し、沖縄の米軍基地をも叩こうとするはずです。

例えば沖縄の嘉手納基地(米軍空軍機基地)が攻撃されれば、言うまでもなく自衛隊の那覇基地も同時に攻撃対象となるのは必至です。

要するに、まちがいなく日本の国土も戦場となるわけです。

ちなみに、もしも台湾有事に至った場合には、日本の離島防衛に米軍の援護は期待できないと思ったほうがいい。

むろん日米安保第5条の発動範囲ではありますが、おそらくはそこまで米軍の手がまわらず、自衛隊が単独で離島防衛に動かねばならないはずです。

結果、与那国島をはじめ先島諸島では、自衛隊と人民解放軍との間で奪還と奪取が繰り返されることになるものと思われます。

しかも先島諸島にはおよそ10万人の日本国民が住んでいます。

これらの人々を安全に沖縄か本土に退避させねばならず、果たしてそのための計画は万全なのでしょうか。

加えて日本として覚悟しておかねばならないのは、台湾有事が核戦争リスクを高めることです。

何十年も前から中国は、人民解放軍を台湾防衛に加担するいかなる勢力をも打倒可能な「世界レベルの軍隊」へと変貌させようと試みてきました。

2001年のWTO加盟とともに毎年着実にGDPを成長させ、驚異的な伸び率で軍事費を拠出してきましたし、加えて海洋進出にも積極的で、台湾侵攻に有効な対応措置をとろうとする米軍の能力を抑え込むため、中国本土から数千キロの海域で「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略をとってきました。

何より、「核の兵器庫」の強大化を進めてきたことは大きい。

そんな中国を米国は「はやければ5年後には台湾統一戦争を戦い、勝利するだけの通常兵力と核戦力を獲得するかもしれない」と予測しています。

昨日のブログでも申し上げましたとおり、今はその能力が完全ではないために、中国が直ちに台湾へ侵攻する可能性は低いと見られているわけです。

ながい年月をかけて軍事的近代化と核の兵器庫の強大化を試みた中国。

そんな中国が台湾統一に執着を燃やしている事実を勘案すれば、ウクライナ紛争でのプーチン大統領がそうであったように、台湾有事においても「核」をちらつかせることは想像に難くない。

限定的に戦術核を使うことも十分に考えられます。

つまり中国が本気で台湾を取りに来るとき、彼らが通常戦力と核戦力上のあらゆる選択肢を検討してくることを、私たちは冷徹に認識しておく必要があります。