国民生活を豊かにするためには、着実な経済成長が必要です、
着実は経済成長とは、労働者一人あたりのGDPを拡大していくことです。
そこで、労働者一人あたりのGDPを決定するのが、①資本装備率と②資本生産率です。
ご承知のとおり、企業が生産性を向上させる際、機械や設備への投資は有効な手段の一つです。
要するに「設備投資」です。
設備投資により投じられた資本(機械や工場のこと)の程度を示すのが①の「資本装備率」です。
資本装備率は、機械や工場などの有形固定資産を労働力で除することで算出されます。
資本装備率が高ければ高いほど資本集約的で、逆に低ければ低いほど労働集約的ということになります。
即ち資本装備率は、労働者一人ひとりが、いくらの資本で武装されているのかを示す指標のことなのでございます。
例えば、指圧マッサージ業やBARなど接客サービス業では、資本装備率が極めて低い。
一方、自動車産業や家電メーカーなどの規格大量生産系の製造業となると資本装備率は高くなるでしょう。
というより、資本装備率を理解するには土木業が一番いいでしょう。
例えばブルドーザーを何機も装備し作業する会社と、機械を一切使わずにツルハシだけで作業を行う会社とでは、どちらが生産性を高くすることが可能でしょうか。
むろん、前者の会社です。
一台のブルドーザーで可能な作業量をツルハシだけで行うとなると、それはそれは大勢のヒトを集めなければなりません。
それに対し、ブルドーザーなどの機械を多用する会社はツルハシの会社に比べて従業員一人あたりの作業量が圧倒的に多くなります。
あたりまえの話ですが、生産性が高く資本集約的であるため、従業員をそれほど雇わなくてもツルハシ組を上回る作業ができたわけです。
因みに、ヒトラーが雇用創出のために行ったアウトバーン建設という公共事業は、なんとブルドーザーを使わせずにツルハシで行うように指示されていたらしい。
生産性を度返しして、とにかく失業者対策として労働集約的にしたわけです。
さて、上のグラフのとおり我が国の資本装備率は、2000年以降、頭打ちとなって下降し、リーマンショック以降は横ばいで推移しており、未だ上向くことがありません。
資本装備率が下落し、そのまま横ばい状態にあるということは、企業(資本金10億円以上)全体が資本集約的から労働集約的になったまま回復していないということです。
わかりやすく表現すると、「下落分、日本の企業全体がブルドーザー型からツルハシ型に移行した」ということになります。
資本装備率が下がれば、資本1単位あたりの生産力を示す「資本生産性」も低下します。
前述のとおり、①資本装備率 ☓ ②資本生産性 = 労働生産性 ですので、詰まるところ労働生産性が落ち込むことになります。
いうまでもなく、労働生産性は実質賃金の決定要因の一つです。
以上のような事実から、我が国の実質賃金が下落していったのは資本装備率の低下、つまりは「投資不足」によるものと言うことができます。