言葉の破壊こそ、民主主義の危機

言葉の破壊こそ、民主主義の危機

総務省というお役所は毎月、全国の都道府県を通じて『家計調査』という統計をとっています。

その目的は、家計収支の実態を把握することで、国の経済政策及び社会政策立案のための基礎資料を提供することにあります。

家計調査は統計法に基づく基幹統計であり、全国の世帯を調査対象にしています。

因みに、世帯としての収入支出を正確に計ることが困難な世帯については調査対象外となっています。

例えば、①学生の単身世帯、②病院・療養所の入院者、矯正施設の入所者等の世帯、③料理飲食店、旅館又は下宿屋(寄宿舎を含む)を営む併用住宅の世帯、④賄い付きの同居人がいる世帯、⑤住み込みの営業上の使用人が4人以上いる世帯、⑥世帯主が長期間(3か月以上)不在の世帯、⑦外国人世帯

さて、上のグラフは2000年以降の実質消費支出指数(2020年=100)の推移です。

数値は名目ではなく実質ですので、上のグラフを解りやすく説明すると、「家計は2001年には120個以上のパンを買うことができたのに、ここ数年は100個前後しか買うことができなくなった」ということになります。

グラフをご覧のとおり、酷いときには93個しか買えない月もあったわけです。

しかも、2014年以降と2019年以降には、2段階にわたってL字型に大きく低迷しています。

むろん、二度に渡る消費税増税(税率引き上げ)の結果です。

これをみると消費税増税がいかに家計を圧迫するのかを顕著に理解することができます。

そして自公政権ほど、国民の実質消費を減らした政権は過去に存在したことはありません。

にもかかわらず、この状況で財務省は、消費税の税率をさらに引き上げようとしているのですから恐ろしい。

どうやら最終的には20%まで引き上げる気でいるのでしょうし、自公政権ではそれを阻止することも不可能でしょう。

去る6月19日、高市早苗(自民党政調会長)が「消費税が法人税の引き下げに流用されているというのは全くの事実無根。使途は社会保障に限定されている。デタラメを公共の電波で言うのはやめて頂きたい」と発言していますが、公共の電波を使ってデタラメを言っているのは高市政調会長の方です。

消費税の税収分のうち、社会保障に回されているとされる額は僅か一部で、そのほとんどは借金の返済(貨幣消滅)に回されています。

このことは、凶弾に倒れお亡くなりになられた安倍元総理が既に明らかにしていたことです。

そもそも消費税による税収が100%社会保障費に使われていることを証明するためには、社会保障特別会計(歳出は社会保障費、歳入は消費税税収ほか)をつくるほかないはずです。

なぜなら、おカネ(現金通貨+預金通貨)に色がついているわけではありませんので。

つまり、そのおカネが「何の税で納められたものなのか…」を確認する術などないのでございます。

ただし、社会保障特別会計(歳入=消費税ほか)とした場合、消費税が恒久税化されることになってしまいますが、理屈としてはそういう話です。

加えて6月26日には、今度は茂木自民党幹事長が「野党の皆さんがおっしゃるように(消費税を)下げるとなると、年金財源を3割カットしなければなりません」と、悪質な国民脅し発言を行っています。

とはいえ、これも全く理屈になっていません。

茂木幹事長は「消費税収入は貴重な年金財源だ」と言いたいのでしょうが、そもそも税収自体が財源だと思い込んでいる時点で大きな誤解です。

即ち、貨幣と財政と国民経済に対する無知発言としか言いようがない。

政治の世界においては、無知は罪である。

このように平然と嘘がまかり通ってしまうのは、政治の世界において絶対にあってはならない「言葉の破壊」が進んでいる証左です。

言葉の破壊こそ、民主主義の危機です。