財務省が緊縮財政を正当化している法的根拠は『骨太の方針2015』にあった

財務省が緊縮財政を正当化している法的根拠は『骨太の方針2015』にあった

そろそろ、2023年度国家予算の概算要求基準が閣議了解される時期になりました。

概算要求基準とは、各府省庁が翌年度の予算要求を財務省に出す際のいわば「ルール」です。

ルールとは即ち「上限」のことなので、概算要求基準のことを「シーリング(天井)」と呼んだりもします。

各府省庁は、この概算要求基準に沿って要求額や内容を8月末までに財務省に提出することになります。

9月に入ると、政府・与党(自民党・公明党)内での調整がなされ、最終的には大臣折衝などを経て年末までに翌年度予算案(政府原案)として閣議決定されます。

閣議決定された政府原案は、翌年1月に招集される通常国会に提出され、衆参両院(予算委員会・本会議)での審議を経て3月末までに議決されることになります。

因みに、予算案を可決しただけでは予算を執行することはできません。

予算案の議決は金額を決めただけの話で、可決された予算を政府が執行するためには、およそ200件ちかい関連法案も同時に審議のうえ議決されなければなりません。

当たり前ですが、政府は法律に基づいて予算を執行します。

私たち日本国民の国家予算は、毎年このような過程を経て成立しております。

政治に興味のない人々には縁遠い話かもしれませんが、来年度予算は既に動きはじめているのでございます。

さて、概算要求基準は各府省庁が翌年度の予算要求を財務省に出す際の「上限ルール」だと前述しましたが、実は2014年以降は歳出全体の上限は設定されていません。

そのかわり、2015年に閣議決定された『骨太の方針』によって「社会保障関係費以外の歳出の増加は3年間で1000億円以内にする」ことが明記されており、その後、毎年の『骨太の方針』でこれが継続的に踏襲されています。

即ち、3年間で1000億円ということは、社会保障費以外の歳出、例えば防衛費や教育費は年間333億円までしか増額できないという枠が嵌められているわけです。

実は財務省が緊縮財政を正当化する法的根拠はここ(骨太の方針2015)にあったのです。

しかも驚いたことに、『骨太の方針2015』の本文中にはこの記述はありません。

注釈として「安倍政権のこれまでの3年間の取り組みでは一般会計の総額の実質的な増加が1.6兆円程度となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続させていくこととする」の一言を添え、本文中に「社会保障関係費の増額を3年間で1.5兆円までに抑える」と記載されていることから、差し引きして「社会保障費以外の歳出の増額は3年間で0.1兆円(1000億円)とする」ことが盛り込まれているのでございます。

仄聞するところによると、当時の安倍総理でさえ、この注釈のことを知らなかったらしい。

安倍さんが知らなかったというより、おそらくは財務省が総理に知られないようにこっそりと注釈で盛り込んだ、と言ったほうが正確なのではないでしょうか。

ゆえに、総理を辞任されたのちにこのことを知った安倍さんは、我が国の財政運営を積極財政に転じさせるために財務省と闘っていく決意を顕にしていたそうです。

だが、その矢先に凶弾に倒れてしまった。

収支均衡至上主義の財務省と真正面から闘うことのできる有力な政治家を、私たちは失ってしまったのでございます。