今朝、ようやく開票作業を終え、参議院の議席が決しました。
事前の世論調査どおり「与党優勢」は揺るがず、自民党の圧勝です。
出口調査に莫大な予算を投じることのできるNHKは、例によって投票終了(午後8時)と同時に「自民過半数確保」というテロップを出していました。
今回の参議院選挙は改選124議席に欠員補充の1議席(神奈川県選挙区)を加えた125議席をめぐる闘いでしたが、自民党はその過半数の63を単独で確保することになりました。
新自由主義と緊縮財政から依然として脱し切れていない自民党が、あるいは維新のように平然と嘘やデマを撒き散らす政党が、これほどまでに支持を集めてしまうところに「民主主義の危機」を感じざるを得ません。
1発の銃弾によって民主主義が破壊されることはありませんが、自らの困難と義務から逃げ、冷静な選択を拒絶した人たちによる投票は民主主義を死に至らしめます。
彼ら彼女らは「選択」しているのではなく、なんとなく信じ、なんとなく賭けているだけなのですから。
さて、私が最も恐れているのは、憲法改正に前向きな、いわゆる「改憲勢力」が非改選と合わせて国会発議に必要な参議院での3分の2以上を維持している点です。
現在、我が国がやらなければならないのは、節度のある保守政治の回復です。
であるならば、いわゆる「改憲派」は今は護憲にまわるべきで、改憲はまともな政府ができてからやってほしい。
むろん、その改憲手法は、現行憲法の無効手続きを経た上で行うこと。
現行憲法(占領憲法)の改正手続きに則って改正してしまうと、我が国は依然として占領体制のまま固定化されてしまうばかりでなく、占領憲法そのものに正統性を与えてしまうことになるからです。
自民党が党是としている「自主憲法制定」には、占領憲法を是認している点において大いなる欺瞞があります。
そもそも主権を有していない被占領時代に、主権の発動たる憲法を制定できるはずなどないのですから。
今回、はじめて1議席を獲得し国政政党となった参政党は、GHQによる戦後日本の被占領体制を批判していますが、その参政党でさえ憲法無効論には至っていない。
残念ながら、与野党を問わず現在の改憲勢力に、そうした本質的な憲法論議を期待することはできません。
だから今は、なんとしても憲法をいじるべきではない。
現行憲法は英米法に拠るのですから、現実の外交・安全保障には解釈変更で対応すればいい。
保守思想の代表的論客であるマイケル・オークショットは次のように述べています。
「外科医が手術を行っているとき、彼はその最中だというのに、手を止めて器具を作り直したりはしない」