依然、我が国は電力危機の中にあります。
先週(6月27日〜30日)も東京電力管内では「電力需給逼迫注意報」が発表されました。
停電という最悪の事態は回避されたものの、この夏に限らず次の冬も危機状態が続くことから電力不足は慢性的なものとなっています。
ご承知のとおり、電力は停電にならないように、使用する電力に対し発電量を3%余分に確保する必要があります。
ただし、3%はあくまでも最低ギリギリのラインで、例えて言うなら飛行機が海面すれすれを飛んでいるのと同じです。
そのようなバッファーが無い状態では、つねに墜落の危機に怯えなければなりません。
ゆえに発電余力は、最低でも常に10%以上は確保されなければなりません。
現に、この余力が5%を切っているからこそ、先週も注意報が出されたわけです。
注意報が出された直接的な理由は、記録的な猛暑に発電所の準備が間に合わなかったことにあります。
早い梅雨明けによる猛暑により、電力需給がこの時期としては東日本大震災以降最大になってしまったのですが、これに対し発電所は真夏前で修理中が多く再開が間に合わなかったのです。
とはいえ、そもそも日本の電力が抱える構造的な問題が背景にあることは言うまでもありません。
構造的問題とは、次のとおりです。
火力発電所が脱炭素化、自由化(発送電分離、新電力参入、FIT導入など)の影響によって毎年数基のペースで廃止され、ただでさえ日本の発電能力が低下してしまっているなか問題なく稼働できる原発を止めており、あまつさえ再生可能エネルギー(以下、再エネ)という不安定電源によってそれらの不足分を補おうとしてきたことです。
火力の廃止は予測していたものの、残念ながら再エネは買取価格の設定や環境影響評価などの制度設計がうまくいかず、実際に増えたのは晴れた日にしか発電できない太陽光だけでしたし、原発については審査が長期化し電力会社の不祥事もあって再稼働は政府の思惑通りには進みませんでした。
その結果、いざというときの発電量が減ってしまったわけです。
政府の最新の予想によると、今月の電力余力は、東北から九州の各電力管内で3.7%と予断を許さない状況です。
さらに冬はもっと厳しい。
来年1月は、東北と東京管内で1.5%、それ以外の電力管内(中部・北陸・関西・中国・四国・九州)では1.9%となり、ほぼ絶望的です。
さらには円安による輸入物価の高騰のほか、ウクライナ危機の影響によって日本が権益をもつ『サハリン2』の先行きが不透明になっているなどエネルギーそのものの供給不安もあります。
まさに弱り目に祟り目です。
そこで、岸田内閣が満を持して出してきた抜本策が…
国民への節電要請。
発展途上国か。
脱炭素化の流れのなかで、再エネ(実質的には太陽光発電)という不安定電源を主力電源に据えようとしてきたこと自体が大失策だったと言わざるを得ません。
因みに、今回の参議院選挙での各党の再エネに関する公約をみると次のとおりです。
自民 最大限導入
立民 2050年 100%
公明 早期に主力電源化
維新 規制見直しを不断なく行う
国民 2030年代 40%以上
共産 2030年 50%
社民 2030年 50%
れいわ 自然エネ100%までガス火力でつなぐ
NHK党 主要エネルギー源になりえない現実を直視
なんだ、NHK党が一番まともじゃないか。