国の2021年度一般会計の決算概要が明らかになりました。
結果として使う必要のなくなった「不用額」が過去最大の6.3兆円に上ったという。
これとは別に22.4兆円の予算執行が今年度(2022年度)に繰り越されていますが、それだって全てが支出されるかは怪しい。
一部は不用額として更に来年に繰り越される可能性があります。
要するに「予算を組んでも使わない…」という姑息な常套手段なのです。
もしも行政のマンパワー不足によって予算を執行できないのであれば、執行できる体制をつくればいい。
緊縮財政派は「どうせ予算を組んでも執行できないんだから、予算規模は小さくていい」と言って、さらなる緊縮財政を主張してくるから質(たち)が悪い。
緊縮財政が行政のマンパワーを不足させ、行政のマンパワー不足が緊縮財政の理由にされる、といういびつな構図です。
なお、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化したい財務省としては、予算執行できないこと自体が嬉しいのにちがいない。
※プライマリーバランス = 税収 ー 国債費(償還費+利払費)を除く歳出
しかしながら、いつも言うようにプライマリーバランスを黒字化させる必要性などまったくありません。
プライマリーバランスの黒字化(赤字縮小を含む)は、政府による貨幣回収です。
いま我が国は、貨幣(総需要)が足りないデフレ経済、そして供給制約に伴うコストプッシュ・インフレで苦しんでいます。
ゆえに政府は支出(貨幣供給)を拡大してデフレを克服するとともに、投資減税なり補助金なりを拡大してサプライサイドの供給制約を解消させなければなりません。
予算(おカネ)は執行されなければ貨幣供給になりませんし、減税もまた立派な財政支出なのです。
例えば今夏もまた、いつブラックアウト(大規模停電)するかわからないような脆弱な電力供給体制にあります。
だったら、それを解消する為の投資に予算を振り向ければいい。
ほかにも食料問題、エネルギー問題、医療問題、防衛問題、あるいは災害対策等々、予算を必要している分野はたくさんあります。
そのために国会には補正予算を審議する権限が付与されているのではないのか…
因みに、政府は支出するために、あらかじめ徴税による財源の確保を必要としません。
なぜなら政府の支出は、徴税より先になるからです。
政府の支出によって民間部門に貨幣が供給され、それが会計年度内の課税によって徴収されるというシステムになっているのでございます。
川崎市政など地方行政もまた同様です。
行政は歳出が先で、歳入が後なのです。
何度でも言いますが、財政赤字の拡大とは貨幣の供給であり、財政健全化とは貨幣の回収になりますので、「予算は組んだけど使わなくて済んだ…」などと喜んでいる場合ではないのでございます。