輸入小麦の政府売渡価格

輸入小麦の政府売渡価格

ラーメン1杯で2,000円、という事態が近づいています。

政府(農林水産省)は年に2回(毎年4月期と10月期)、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づいて輸入小麦の売り渡し価格を決めています。

輸入小麦の政府売渡価格とは、過去の一定期間の輸入価格の平均値に、いくらかのマージンを上乗せした価格のことで、マージン分は政府管理経費や国内産小麦の生産振興対策に充てられています。

以前は年間を通じての固定価格でしたが、国際相場の変動の影響を緩和するため、2007年からは年に2回、価格を改定することになりました。

さて、ことし4月期の輸入小麦の政府売渡価格は、昨年10月期に比べて17.3%もの値上げとなりました。

値上がり要因の第一は、昨年夏に高温・乾燥だった米国、カナダ産小麦が不作であったこと。

第二は、米国、カナダ、オーストラリアなど、日本向け産地における品質低下等によって日本が求める高品質小麦の調達価格帯が上昇していることが影響しています。

農林水産省の試算によると、政府売渡価格の改定が食品の小売価格に与える影響は次の通りです。

①食パン      1.5%(1斤当たり2.6円程度)増
②中華そば(外食) 0.2%(1杯当たり1円程度)増
③小麦粉      4.4%(1kg当たり12.1円程度)増

断っておきますが、今回(ことし4月期)の改定にはロシアによるウクライナ侵攻はそれほど影響していません。

なぜなら、侵攻がはじまったのは2月24日です。

4月期の政府売渡価格は前月(3月)には決定されていますので、期間の短さからいってさほど影響していないはずです。

本格的に影響するのは、次の10月期改定かと推察します。

おそらくは飛躍的に上昇するのではないでしょうか。

いずれにしてもロシアとウクライナは世界最大の穀倉地帯です。

苦戦を強いられているロシアとしては戦略物資である小麦の輸出規制を解除するつもりはないでしょうし、終わりの見えないウクライナ情勢が世界的な供給懸念を一層深刻化させていることから小麦の国際価格は今後とも上昇する一方でしょう。

小麦生産量の多いインドもまた穀物の輸出規制を行っていますが、インドのみならず世界各国が食糧の囲い込みに走っています。

このままいくと近い将来、ラーメン1杯で2,000円、立ち食いそば一杯で1,000円となる日がくるに違いない。

我が国のように自国の穀物需要を自国の供給で充たせない国は主権国家とは言えません。

それが世界の常識です。

食料自給率を引き上げる努力を怠ってきた大きなツケを支払わされるのは、私たち日本国民です。