きのう(6月22日)、参議院選挙が公示されました。
因みに「公示」であって「告示」ではありません。
参議院の通常選挙及び衆議院の解散・総選挙は、憲法7条(天皇陛下の国事行為)に基づいて行われるため「公示」となりますが、憲法7条に基づかない市議会議員選挙などの地方議会議員選挙、あるいは首長選挙では「告示」となります。
公示日直前に開かれた与野党9党首の党首討論をみましたら、岸田総理が「(物価高騰の要因とみる)エネルギーや食料の価格抑制に財政を出動する」と表明していました。
しかしながら私としては、もはやこの男に期待できるものなど何もありません。
そういえば、参議院選挙用に制作された自民党の政党ポスターが街中に張り出されていますが、そこには岸田総理の顔写真とともに「決断と実行」「暮らしを守る」というキャッチコピーがありました。
だが私には、「検討を検討」「支持率を守る」にしか見えませんでした。
さて、コストプッシュ型インフレは、きのう今日に始まった話ではありません。
ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以前から既にはじまっていましたが、仮にウクライナ危機以降としても、少なくともこの4か月の間、コストプッシュ型インフレ対策として行った岸田内閣の財政政策は、ガソリン価格を少しばかり下げただけ。
ただそれだけ。
しかもトリガー条項凍結を解除して発動したのではなく、石油元売り各社への補助金を1リットル25円に引き上げただけです。
ご承知のとおり、元売りに補助金を出しても末端消費者にどれほどの恩恵があるのかは不透明です。
よって、本来であれば凍結しているトリガー条項を解除すべきところですが、それでは恒久減税になってしまう可能性があるため財務省は抵抗しているわけです。
トリガー条項とは、ガソリン価格が3か月連続で1リットル160円を超えた場合、暫定税率として課しているガソリン税上乗分(25.1円)を課税停止にするという条項です。
現在、当該条項は凍結されたままです。
これを解除してもらったほうが消費者としては直接的に助かるのですが、もしも解除するとそのまま暫定税率を課税できなくなる恐れがあるため財務省は絶対にやらない。
求められている「消費税減税」もそうですが、税金関係はいったん減税すると、再び増税するにはものすごい政治的エネルギーを要するため財務省は絶対にやりたくないわけです。
しかし減税も財政出動の一つです。
ところが病的なほどに、財政収支は常に均衡していなければならない、と考える財務省にとっては歳出拡大も減税も両方ともやる気など全くないのでございます。
岸田さんは総理に就任して以来、ひたすら財務省の言いなりに成り下がってきた男です。
昨年の衆議院選挙直前に「財政破綻論」というインチキ論文を明らかに政治的(選挙的)意志をもって『文藝春秋』に掲載した不届きな財務事務次官を更迭すらしない。
6月7日に閣議決定した『骨太の方針2022』でも「令和5年度予算において、本方針及び骨太の方針2021に基づき、経済財政一体改革を着実に推進する」と明記されています。
なんてことはない、昨年の『骨太の方針』と同じだということです。
要するに、新しく総理大臣を選んだ意義など何もないということです。
何度でも言います。
財政健全化論こそが無責任の極みです。
財源とは税収ではなく貨幣のことであり、貨幣とは返済義務の生じない特殊な「負債」です。
それを発行できる政府がその機能を果たしていないところに問題の本質があります。
こうした本質論が、きのうからはじまった参議院選挙を通じて少しでも世に知れ渡ることを切に望みます。