言葉の退廃は亡国の兆

言葉の退廃は亡国の兆

内閣発足当初の岸田総理が「所得倍増計画」を公約に掲げていたことは記憶に新しい。

国民の所得を倍増させるには所得の総計であるGDP(国内総生産)を成長させなければならないことから、いよいよ岸田内閣がプライマリーバランス黒字化目標を破棄して積極財政に転じ、長きにわたるデフレ経済に終止符を打ってくれるものと私は国民の一人として大いに期待をしておりました。

ご承知のとおり我が国においては、1990年代以来のグローバリズム政策(新自由主義政策)により、所得(GDP)で稼ぐ人たちよりも、資産(ストック)の運用で稼ぐ人たちのほうが豊かになる歪な経済構造になってしまったことから、中間所得層が破壊され格差が拡大してきました。

ゆえに、普通に働く国民の給料を上げる「所得倍増計画」は実に理に適った政策だと感服しておりましたし、加えて岸田総理は「格差を無くすために金融所得税を強化する」とまで言っていたので、これで我が国はグローバリズム経済から本格的に脱却できるものと期待していたわけです。

ところがその後、岸田総理は「所得倍増とは必ずしも所得が2倍になることではない」と意味不明なことを言い出した。

そして事もあろうに「所得の倍増」ではなく「資産所得倍増計画」などと、まったく逆のことを言いはじめたのです。

資産所得倍増計画は、明らかにカネ持ち優遇路線のグローバリズム政策です。

6月7日に発表された「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)の中にも「資産所得倍増プラン」が記載されており、なんとその狙いは「家計金融資産2000兆円を貯蓄から投資に回す」ことにあるというのですから驚きです。

即ち、普通に働く国民の所得を増やすのではなく、国民がもつ金融資産を不労所得者のために活用させると言うわけです。

挙げ句の果てには「国民1億総株主化」とまで言いはじめています。

就任当初は「小泉以来の新自由主義を転換します」と言っていましたが、いまや岸田内閣は完全に「新自由主義政権」です。

ここまであからさまに公約を無視した路線変更も珍しい。

これでは、同じ新自由主義者でも、「構造改革を断行する」と公約し、そのまま公約を実行して国民を不幸に陥れた小泉元総理のほうが余程にまともに見えてくる。

あきらかに岸田総理は嘘つきだ。

言葉に対する責任の欠片もない。

ここ数年、我が国の政治家たちの言葉は明らかに退廃しています。

平気で嘘をつき、舌の根も乾かぬうちに平然とまた次の嘘をつく。

義務教育程度の漢字すらまともに読めない総理大臣もいた。

未曾有→みぞうゆう

詳細→ようさい

背後→せご

腹心→ばくしん

云々→でんでん

総理大臣がまともに漢字を読めない国だから、国民をなめきった官僚たちの公文書管理もインチキになる。

文書の偽造、統計の改竄、事実の捏造は朝飯前、都合の悪い防衛省の日報は隠蔽され、総理主催「桜の会」の名簿も公文書の保管義務を無視して平然と破棄されてしまう有様です。

国だけではなく川崎市においても、議員が説明を求めると、鉛筆を舐め舐めして虚偽の文書を作成し「これが根拠です…」と傲慢な態度でインチキ文書を出してくる役人もいます。

公文書管理が適切に為されていないこと、そして言葉の退廃が進んでいること、これらこそまさに亡国の兆ではないか。