政府は今週開かれた関係閣僚会議において厳しい電力需給を示しました。
電力の安定供給には、需要に対して発電量を3%余分に確保する必要があります。
ところが来月、厳しい暑さになると、東北、東京、中部電力管内では余力が3.1%となり、わずか0.1ポイント上回るだけの綱渡り状態、また西日本の電力管内もそれぞれ3.8%にとどまります。
さらに冬はもっと厳しく、来年1月は中部、北陸、関西、中国、四国、九州のそれぞれの管内で1.3%にまで落ち込み、なんと東電管内に至ってはマイナス0.6%となります。
マイナスということは、電気が足りないことを意味します。
電気は需要と供給のバランスがとれないと停電する仕組みになっていますので、このままでは広域停電は避けられません。
これを受けて岸田内閣は7年ぶりの節電要請を決めたわけです。
節電要請の対象は全国、期間は7〜9月ですが、ウクライナ危機に伴う燃料供給のリスクをも考慮すると予断を許さない状況が続きます。
3月の福島沖地震で損傷した発電所の復旧も遅れているらしいのですが、むろんそれ以前からの構造的な問題があります。
東日本大震災以降、我が国は太陽光を中心に再エネ拡大を進めてきましたが、太陽光ほど天候に左右される不安定電源はありません。
結果、太陽光が発電できない時間を既存の火力発電をフル稼働させることでなんとか凌いでるのが実状です。
しかしながら、調整にしか使われなくなった火力発電の稼働力が落ち込み採算性が悪化、また脱炭素の流れもあり、電力会社は効率の悪い老朽火力を中心に休止や廃止を急ぐようになりました。
毎年、大型火力2〜4機分が休廃止されていることから、いざというときの発電量が足りなくなっているわけです。
この夏はおそらく、休止中の火力発電を再稼働させることでなんとか凌ごうという算段らしいが、果たしてどうか。
いったん休止した老朽火力発電を再稼働させるためには、相当な時間と人員とコストがかかりますので。
そこで、やむなく利用者側に節電を求めているわけですが、こうなるともはや我が国は先進国とは言えません。
3月のひっ迫警報でも、最終的には揚水発電と節電により何とか停電を回避しました。
節電を強いられ、それでもなお停電に怯えなければならないような国はどうみても発展途上国です。
デマンドレスポンスなどという稚拙な節電対策まで登場しているのですから実に情けない話です。
東日本大震災以降の我が国は、FITの導入、電力の小売り自由化、発送電分離等々、愚かにも公的電力サービスを民間ビジネスのネタにしてきたのです。
その代償は計り知れません。
むろん、この大きなツケを払わされるのは私たち日本国民です。