コロナ危機が深刻化した際、国民に対する手厚い給付が行われた米国では、自粛明け需要が一気に伸びてインフレ率が上昇しています。
それを受けてFRB(米国の中央銀行)はさっそく利上げに踏み切り、6月と7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)においても各0.5ポイントの利上げがほぼ確実となっています。
因みに、FOMCとは日銀で言うところの金融政策決定会合にあたります。
一方、インフレ率が過去最高を更新しているEU(欧州連合)においても、中央銀行であるECBが「金融政策引き締め」という世界的な動きに合流しようとしています。
そして我が国においても、米国との金利差による円安、及びコストプッシュ・インフレの高まりから「はやく利上げすべきだ…」という意見が高まっています。
しかしながら、我が国のインフレはあくまでもコストプッシュ型のインフレであり、米国のようにデマンドプル型(需要拡大型)のインフレではありません。
日本経済は、依然として需要が不足する「デフレ経済」なのでございます。
デフレギャップは、内閣府のインチキ試算においても21兆円あるとされています。
このような状況下で日本が利上げに踏み切ってしまったら益々もってデフレ化してしまいます。
なお、為替対策としての利上げもあり得ない。
そもそも利上げをしなければならないときとはどういうときでしょうか?
日本中の個人や企業が銀行からおカネを借りまくり、そのことにより財やサービスが買われインフレ率が急騰している場合のみです。
それ以外に利上げが正当化される理由はありません。
なのに…「円安だから利上げしろ…」という知識人を気取るお〇〇さんがいるから質(たち)が悪い。
もしも円安(為替)を理由に利上げを行うとどうなるか。
たしかに為替は円高にふれることになるでしょうが、日本の株式市場は7割が外国人投資家による取引です。
円高という日本株の割高感から「売り」が殺到し、かえって株価が下がることになります。
株価というものは、上昇しても景気には直結しないのですが、なぜか下落すると失業率が上がるなど景気に悪影響をもたらします。
要するに、いま利上げすると株価が下がり景気がさらに悪化するだけです。
デフレとコストプッシュ・インフレが併存している今の日本には次の二つの政策が必要です。
1.コストプッシュ・インフレに苦しむ国民や企業への財政的保護、即ち消費税の廃止もしくは減税、あるいは給付金等の措置(このことは国民の購買欲をも高め、デフレ脱却につながる)
2.エネルギーや原材料などの供給制約の緩和、経営合理化、技術開発、インフラ整備等々を目的とした積極投資
もはや、この道しかない!
むろん、これらを行うには政府による財政支出の拡大が大前提です。