財政出動させないための装置

財政出動させないための装置

きのう内閣府から、日本経済の需給ギャップ(GDPギャップ)が発表されました。

需給ギャップとは、消費や設備投資といった経済全体の需要と、労働時間などから計算する潜在的な供給力との差をいいます。

プラスであれば、需要過多。

マイナスであれば、需要不足です。

内閣府によると、2022年の第1四半期(1~3月期)の需給ギャップはマイナス3.7%で、金額(年換算)にすると21兆円の需要不足が生じているとのことです。

しかしながら、いつも言うとおり、内閣府によるGDPギャップ試算は需要不足額が小さくなるように仕組まれています。

なぜなら内閣府は「潜在的な供給力」(潜在GDP)を最大概念ではなく平均概念(過去平均)で算定しているからです。

本来は、日本中にある工場や機械などの生産施設がフル稼働、労働力も完全雇用でフル稼働した場合「どれだけの供給能力を発揮できるか」が潜在GDPの定義だったのですが、それをある人物が過去平均に定義を変更してしまいました。

ご承知のとおり過去平均にしてしまうと、デフレ経済(需要不足)が続けば続くほどに潜在供給能力は小さくなっていきます。

自然、デフレ経済の場合、そのギャップ(デフレギャップ)は実際よりも小さくなります。

即ち、彼らは「デフレギャップが小さいんだから、デフレ対策(財政出動)を行う必要はないでしょ…」と言いたいわけです。

てな具合で、内閣府は21兆円の需要不足としていますが、おそらく実際には30兆円以上の需要不足があるものと推定されます。

とはいえ、少なくとも21兆円の需要不足があることを政府として認めているわけですから、それを埋めるための財政出動を行うべきではないでしょうか。

でもやらない。

なぜなら、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化という財政健全化目標が設定されているからです。

これを設定したのもまた、前述のある人物です。

因みに、日本の経済成長モデルを発展途上国型の経済モデルに変更し、「財政出動しても、あまり需要は増えませんよ…」としたのもまた、その人物です。

ほんとすごいですね。

財政出動をさせないための、そしてデフレを脱却させないための各種の装置が幾重にも張り巡らされています。

むろん、それが彼らのビジネス上の利益だからです。

いかに日本国民が貧困化しようが、彼らには全くお構いなしです。

典型的な、今だけ、カネだけ、自分だけの人たちですから。