明日、『骨太方針 2022』が閣議決定される見通しです。
『骨太の方針』とは総理が議長を務める「経済財政諮問会議」で策定され、毎年6月ごろに閣議決定されるものです。
正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」で、ときの内閣の重要課題や翌年度予算編成の方向性が示されます。
当該方針は、かの有名な政商レントシーカーである竹中平蔵氏が初入閣した2001年(小泉内閣)から毎年策定されています。
例のプライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化目標、即ち「緊縮財政目標」は、この『骨太の方針』に盛り込まれてきました。
竹中氏が緊縮財政の必要性を主張する理由は実にわかり易い。
つまり、政府が緊縮財政を続けるかぎり、日本経済はデフレ(総需要不足)が続きます。
収益増が見込めないデフレ下において企業が株主配当を増やすためには、どうしても人件費や減価償却費(投資)を抑制しなければならず、とくに経費が嵩む「正規社員」は邪魔な存在となります。
なので企業としては、いざとなったらいつでもクビを切ることのできる雇用形態の社員が欲しい。
そこで登場するのが、人材派遣会社です。
まかり間違って政府が積極財政を行ないデフレを脱却してしまったら、人材派遣会社の出番が失われます。
長期的な経済成長(企業収益の増加)が見込まれたうえで人手不足になれば、企業は正規社員を確保する必要に迫られるからです。
ゆえに、人材派遣会社の取締役会長としては、政府に積極財政などやってもらっては困るわけです。
緊縮財政を正当化するため、『骨太の方針』には常にプライマリー・バランス黒字化目標が記載されていなければならないのです。
去る5月31日、『骨太の方針 2022』の原案が示されています。
実はその5日前、安倍元総理が「GDP比2%の防衛費増額目標」に言及していました。
それを経済財政諮問会議が『骨太の方針』でどのように反映するのかが注目されていましたが、原案では「安全保障環境は一層厳しさを増している」と明記されただけで、安倍元総理が言及していたGDP比2%という防衛費の増額目標について触れず、脚注で「NATO諸国がGDP比2%以上を達成するという目標を掲げている」と記載しただけでした。
安倍元総理に対する多少の配慮から「安全保障環境の厳しさ…」を記載したものの、防衛費の数値目標を明記することはありませんでした。
結局はプライマリー・バランス黒字化目標の呪縛から逃れられないわけです。
与党内では「プライマリー・バランス黒字化目標」を明記するか否かについて綱引きが行われているようですが、いずれにしても財政健全化の旗が降ろされることはないようです。
何度でも言います。
プライマリー・バランスを黒字化する必要などありません。
むしろ弊害です。
日本国民の皆様、「財政健全化…」という言葉に騙されないで下さい。
そもそも政府の借金は増えるのが、世界の常識です。
無理して政府債務を減らそうとしている国などありません。
政府による国債発行は「孫子の世代への先送り」ではなく「孫子の世代のために行わねばならない投資」です。
しかも孫子の世代には返済義務などありません。
残念ながら、政府の借金を完済する日など永遠にやってこないのです。
なぜなら、政府の国債発行残高とは、政府の通貨発行残高にすぎないからです。
政府の通貨発行額(国債発行額)を増やすことなしに、経済を成長させることなど物理的に不可能なのでございます。