岸田内閣が6月にまとめる『新しい資本主義計画』の原案が明らかになりました。
大まかなポイントを上げると次のとおりです。
まず「人への投資」と称して…
①成長分野に労働移動100万人支援
②NISAの充実
「スタートアップ」と称して…
①M&A目的の公募増資円滑化へ
②操業融資の個人保証不要に
③産業革新投資機構の年限を2050年まで延長
「GX(グリーントランスフォーメーション)」と称して…
①GXに10年で150兆円超投資
②カーボンプライシング具体化
③再エネや原子力を最大限活用
…なんですか、これ?
どこが「新しい資本主義」なのでしょうか。
岸田総理は昨年の総裁選以来、「小泉以来の新自由主義を見直して…」と言ってきました。
新自由主義の具体的政策は「緊縮財政」と「構造改革」なのですから、新しい資本主義と言うのであれば何よりも「積極財政」と「逆構造改革」が謳われていなければおかしい。
それらしいのは「GXに10年間で150兆円」ですが、どうして「GX」だけなのでしょうか。
防衛、防災、食料、交通インフラ、教育、医療、科学技術等々、投資すべき対象はいくつもあります。
べつにGXを否定はしませんが、しかしそれらは「新自由主義」の名のもとに断行されてきた「電力の小売り自由化」「発送電分離」「FIT導入」等々、我が国のエネルギー安全保障を現実的に揺るがしている根本問題を見直すことを前提に進められるべきではないでしょうか。
それに岸田内閣は未だプライマリーバランス(PB)黒字化目標を破棄していないのですから、10年間で150兆円分の財源を確保するために増税でもするのですか?
増税はしない、というのであれば、他の何らかの予算が大幅に削減されることになります。
それに「M&A目的の公募増資の円滑化」は、菅内閣がデイビッド・アトキンソン氏にそそのかされて進めてきた路線の延長ではないのか。
経営体力の弱った日本の中小企業を安く買わせ、外資に高く売って儲けるM&Aビジネスを奨励するのか。
また、「成長分野への労働移動100万人支援」と言うけれど、まずは新自由主義政策によって膨れ上がった非正規雇用を徐々に正規雇用に戻していく政策が必要だろうに。
長期にわたり正規雇用で雇われ続けることでスキルを身につける、これこそが最大の「人への投資」です。
金融市場が注視している「金融所得課税の強化」についても、まだ内閣として結論がでていないようです。
これも腰砕けに終わる可能性が大です。
べつに強化しなくてもいいが、「投機で儲ける人々」よりも、日々働き「所得(GDP)で暮らす人々」の実質賃金を上昇させる資本主義にしてほしい。