相変わらずの藤巻節

相変わらずの藤巻節

元参議院議員が現職の国会議員に成り済まし、新幹線のグリーン券をだまし取って逮捕されたのには驚かせられましたが、それに負けず劣らず驚かせてくれるもうひとりの元参議院議員がいます。

その名は、藤巻健史(ふじまき たけし)先生。

朝日新聞によると藤巻先生は、モルガン銀行の東京支店長として「伝説のディーラー」と呼ばれていた時代があったらしい。

金融経済に精通されていることから、藤巻先生は参議院議員をお辞めになった今でもなお、その持論を書籍や新聞等で展開されています。

5月1日にも『吹けば飛ぶような日本経済』(朝日新聞出版)を上梓されています。

出版の宣伝も兼ねてでしょうが、4月29日付の朝日新聞に藤巻先生のインタビュー記事が掲載されていました。

そのタイトルがまた凄い。

『日銀の債務超過危惧 1ドル500円、国債投げ売りも』

例によって藤巻先生の十八番(おはこ)の「日銀が破綻するぅ〜」です。

つい最近までは「国(日本政府)が破綻するぅ〜」と言い続けてきたのですが、藤巻先生の主張に反し一向に破綻しそうにないものだから、ある時期から「日銀が破綻するぅ〜」にちゃっかり乗り換えています。

因みに、日本銀行の令和3年度上半期の『財務諸表』をみますと、純資産は4.4兆円あり債務超過に陥る気配はありません。

それでも藤巻先生によれば「やがて金利上昇やインフレが始まり日銀が金融引き締めを迫られると、日銀自身が保有する国債の含み損が急に膨らみ、事実上の債務超過とみなされる状態になる」のだそうです。

要するに「日銀が大量に購入した国債が紙くず同然になってしまうから、やがて日銀は債務超過になる」と言いたいわけです。

藤巻先生にはどうしても理解できないことのようですが、日銀は「簿価会計」であって「時価会計」ではございません。

それに、当の日本銀行自身が「仮に一時的に債務超過になったとしてもすぐにおかしくなるわけではない」と反論しています。

日銀の反論に対して藤巻先生は次のように述べています。

「債務超過になったら海外の金融機関には日銀の当座預金口座を閉じるところが出てくる。そうなれば日本で外国為替取引ができなくなり、ドルを買う手段がなくなってくる。外資は撤退、日本国債は投げ売られる」

なんとSWIFTから締め出されたロシアみたいになると言うのですから、ここまでくると妄想としか言いようがない。

あるいは「海外が日本国債を投げ売る…」と言うけれど、もしもそうなったら日銀が買い取ればいいんじゃないの。

日本国債の海外保有分はわずか約70兆円程度ですし。

すると今度は「日銀の債務超過を防げたとしても、日本の信用低下が避けられない。歴史的にも財政ファイナンスの帰結は必ずハイパーインフレだ。個人なら自衛手段としてドルを買うしかない」と藤巻先生は宣わる。

ハイパーインフレとは、一年間で13,000%の物価上昇率です。

現在の日本のインフレ率を藤巻先生はご存知ないのでしょうか。

コアコアCPIがマイナス化しているほどにデフレです。

藤巻先生によると、為替市場ではやがて1ドル=400〜500円になってもおかしくないとのことです。

とうていあり得ないことだと思いますが、百歩譲ってそうなったとすると、それはそれで世界第2位の外貨準備高(ドル保有)を持っている日本はウハウハですね。

トヨタなどの輸出産業はボロ儲けです。

藤巻先生の妄想力には、まこと恐れ入ります。

なるほど、きっと藤巻先生は朝日新聞からインタビュー料をドルで受け取ったにちがいない。