アトキンソンは引き込み役

アトキンソンは引き込み役

米国の金融大手のゴールドマン・サックスが日本での不動産投資を倍増するらしい。

1,000~1,500億円というこれまでの規模を2,500億円の規模にまで引き上げるとのことです。

投資先は業績が悪化した企業が売却する不動産のほか、これから需要増が見込まれる物流施設やデータセンターだという。

たしかに新型コロナの影響で在宅業務が普及したことから、都心のオフィスビルの空室率が上がっているようです。

ゴールドマン・サックスは不動産バブル崩壊後にはかなりの存在感を示していた時期もありましたが、リーマン・ショック以降は、外資系としては米国のブラックストーンなどのファンドが不動産の買い手として有名になりました。

今回のゴールドマン・サックスの発表は再び外資としての日本での存在感を示そうというものになりそうです。

外資が日本市場に興味をひくもう一つの理由は、なんと言っても安い金利なのだと思います。

日本の安い円資金を借りてそれを両替して外国で投資しているファンドも少なくありません。

米国の金利が上昇して日米の金利差が拡大したときなど、本来でればで円安になるところ、そうはならず逆に円高になるときがあるのはそのためです。

即ち、外国投資家らが日本で借りた安い円資金をいったん返済するために「円」が買われるわけです。

いわゆる「巻き戻し」です。

むろん、外資に狙われているのは不動産だけではありません。

我が国は長きにわたってデフレ経済(総需要不足経済)が続いているために企業に投資先が乏しく、ゆえに銀行にも資金需要がない。

加えて、デフレで需要が縮小するから企業業績も悪化する。

そこで、日本の低金利資金を借り、弱った日本企業を買い叩こうとする禿鷹外資ファンドが現れることになるわけです。

「禿鷹ファンドよ、さぁ日本で儲けなさい」と言って、日本政府内で既に影響力を振るっているのがアトキンソンです。

彼は、いわば「引き込み役」です。

引き込み役とは、盗賊が大店(おおだな)に押し入るに際し、あらかじめその大店に女中や奉公人として潜り込ませた賊の手下のことで、いざというとき内側から引き戸を開けて賊を中に引き入れる役目のことです。

引き入れたあと、仲間を金蔵まで案内する。

引き込み役のアトキンソンは、潜り込んだ菅政権で中小企業法などの関連法を改正させ、禿鷹ファンドに日本の中小企業を買いやすくする環境を整えつつあります。

そのうえ外資にとっては日本国内での資金調達環境もいい。

上のグラフのとおり、現在の日本では民間銀行の貸出態度はそこそこです。

つい4~5年前までは、なんとバブル期並みの貸出態度でした。

コロナ禍の影響で少し落ち込んでいたものの、ここにきて再び徐々に上向きつつあります。

例えば不動産投資系でいえば、駅近マンションなどの優良案件には、今でも喜んでおカネを貸してくれるはずです。

銀行の貸出態度がいいだけに、このまま日本がデフレを脱却できないままでいると、低金利と日本企業の業績悪化がつづいてしまい、結果として禿鷹外資に買い叩かれるチャンスを与えることになります。

ゆえに、その意味でもデフレ脱却は急務なのです。

いつも言うように、デフレ脱却のためには一刻も早く日本政府がPB(基礎的財政収支)の黒字化目標を破棄し、長期的な投資計画を発表する必要があります。

政府から長期的な投資計画が示されることで、企業もまた需要と投資の見込みを立てることが可能になります。

やがてマイルドにインフレ率と金利が上昇することになって、めでたくデフレ脱却ということになります。

デフレを脱却すれば、日本企業とりわけ中小企業が外資によるM&Aの対象になることもなく、力強く成長していくことができます。

日本の優れた技術の多くは中小企業が保有しています。

要するに、このままデフレを放置していると、ハイエナが獲物にたかるようにして日本が買われてしまうことになるのです。