ロシアがウクライナに軍事侵攻してから44日が経ちました。
未だ停戦合意の見込みはありません。
戦争による被害や弊害は様々ですが、実は今回のウクライナ危機によって世界的な食料危機の可能性が高まっています。
ご承知のとおり、ウクライナとロシアは世界有数の穀倉地帯です。
世界の穀物輸出量の21%はロシア、9%はウクライナですので、この2ヶ国で世界輸出量の3割を占めていることになります。
ウクライナ黒海沿岸の輸出拠点(港)は既にロシアによって閉鎖されているらしく、多くのウクライナ国民が国外に避難したり、農民が従軍したりしているため深刻な人手不足に陥り農作業自体が困難になっているという。
それに播種期である4月がこのような状況ですから、今年はともかく来年の収穫に甚大な影響が出るのは必至です。
例えば、世界最大の小麦輸入国はエジプトですが、その8割以上をロシアとウクライナに依存しています。
我が国は小麦やトウモロコシなどの穀物を主としてアメリカ、カナダ、オーストラリアに依存していますが、ウクライナ危機に伴う需要のしわ寄せでそれらの価格の高騰は避けがたい。
価格が高騰するだけならまだしものこと、海運業の世界では取り扱い量の少ない日本の航路は敬遠されているらしいので、もしかすると国内への供給が絶たれる可能性すらあります。
ウクライナ危機以前に、既に我が国の食料自給率は過去最低の37%を記録しています。
にもかかわらず、政府による農業支援策は実に手薄い。
そもそも、お米や生乳を減産しているときではないはずです。
自給率の低下とともに、既に世界の飢餓人口が7億人にも達しているわけですから、国内の食料供給能力を強化し、国内外への人道支援も含め需要を創出するなどして、農家も消費者も共に助かる政策をうつべきです。
生産抑制は農家の意欲を削ぐだけです。
例えばアメリカは、コロナ禍による農家の所得減に対して総額3.3兆円の直接給付を行いました。
さらには3,300億円の財政支出により農家から生産物を買い上げ、それを困窮者に届けています。
そもそも緊急支援以前に、アメリカ、カナダ、EUでは、予め設定されている最低限の価格で穀物や乳製品を政府が農家から買上げ、国内外の援助に回すシステムを平素から維持しています。
さらにその上にもう一段、農家が継続的に生産を営むことができる価格帯を設定し、その差額(生産費)分を直接支払いするなどしています。
要するに、食料安全保障を確保するために自国の農家を手厚く支援しているわけです。
財源は?
むろん新規国債の発行です。
食料安全保障よりプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を優先するどこぞやの国とはえらい違いです。