今朝、テレビを観ていたら、東京都内にある立ち食いそば店『一由そば』の店長さんが次のようにコメントされていました。
「ロシア産のそば粉が入ってこないと、そば粉全体の入ってくる量が減るので、そば粉の値段が上がっていく…」
いかにも悲痛さが伝わってきます。
大きなゲソ天がのったジャンボゲソ太蕎麦(450円)が人気商品なのだそうですが、昨年12月に値上げをしたばかりなのに更なる値上げを検討せざるを得ないとのことです。
また、6月から外国産そば粉を値上げすると既に発表している『松屋製粉』さんも、「さらなる値上げにつながるかも」と頭を抱えておられるようです。
むろん、ロシアによるウクライナ侵攻が原因です。
そばと同様に価格が高騰しているのが輸入トウモロコシです。
輸入トウモロコシは、乳牛に与えるエサの一部に使用されている場合が多い。
牧場はコストのほとんどがエサ代らしいので、輸入トウモロコシの価格上昇が続けばどうしても価格に転嫁せざるを得ないのだと思います。
輸入トウモロコシの価格が上昇しているのもまた、穀倉地帯であるウクライナからの供給が滞る懸念から、国際的なトウモロコシの先物価格が上昇しているためです。
これがいわゆるコストプッシュ型インフレです。
景気が良くなり需要が拡大していくことによって生じる「デマンドプル型インフレ」ではなく、例えば原油価格の上昇、凶作による食料価格の上昇、あるいは戦争や疫病や自然災害によって生産や流通が滞ることによって起きる物価高などなど、供給制約によって生じるインフレです。
とはいえ、コアコアCPI(エネルギー価格や食料価格を除いた消費者物価指数)を見ますとマイナスで推移していますので、現下の日本経済はデマンドプル型インフレではないことは確かです。
つまり今の日本経済は、コストプッシュ型インフレとデフレが併存している格好です。
正しい貨幣観をもっていない財政健全派(財政収支の縮小均衡派)たちは「ほれみたことか。財政規律を守らないからインフレになっているじゃないか…」と言いたげですが、彼ら彼女らは前述のとおりインフレには2種類あることを知らない。
コストプッシュ型インフレを克服するには、供給能力を強化するとともに供給制約を緩和する政策が必要です。
結論から言うと、企業の投資と技術開発を促すための需要創造、即ち財政支出の拡大が必要です。
供給能力の拡大には時間を要しますので、残念ながらその間はコストプッシュ型インフレの影響を受けることになります。
しかしそれは致し方のないことです。
これまで長きにわたりデフレを放置し、供給能力を毀損してきた報いでもあります。
まちがっても物価上昇(コストプッシュ型インフレ)に驚き、緊縮財政を断行して需要を減退させるような政策を採ってはなりません。
その時点でアウトです。