減っていく耕作地面積

減っていく耕作地面積

我が国は今、種や肥料やその生産資材を含め「食料」の国内確保がどうなるのかわからない事態に直面しつつあります。

それでも岸田内閣の農業政策の目玉は「輸出5兆円」と「デジタル農業」らしい。

要するに「確保が厳しいからこそもっと自由貿易を進め、デジタル農業により貿易を拡大して食料を確保すべきだ」と言うわけです。

いかにも突っ込みどころ満載な理屈ですが、そもそも自由貿易の大前提となる「覇権国が主導するグローバリズム世界」はすでに崩れ去っています。

今回のようにロシアがウクライナに侵攻しようとも、世界の警察官としての力を喪失している米国は核を保有する国が起こす紛争にコミットメントしようとはしない。

「しない…」と言うより「できない…」と言ったほうが正しいでしょう。

にもかかわらず、未だ「自由貿易がぁ~」と言っている連中の無責任さが実に許せません。

我が国の食料安全保障は、政府や国民が思っている以上に脆弱です。

例えば、日本の野菜はその80%が国産ですが、種取りの90%は海外圃場です。

それを考慮しますと、もしも物流が停止した場合の野菜の自給率はたったの8%となります。

恐ろしいことに、このままいくと2035年には4%にまで低下します。

畜産もしかり。

鶏卵の国産率は96%となっていますが、鶏が食するエサは輸入です。

もしもエサが止まれば、鶏卵の自給率は12%です。

因みに鶏のヒナは100%が海外からの輸入ですので、もしも物流が止まれば0%です。

それに、政府による生産者保護についても日本は実に冷たい。

例えば米国では、コロナ禍による農家の所得減に対して総額3.3兆円の直接給付をおこない、3300億円で農家から食料を買い上げて困窮者に配布しています。

そもそも緊急支援以前に、米国、カナダ、EUでは、設定された最低限の価格(「融資単価」「支持価格」「介入価格」など)で政府が穀物や乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持しています。

さらにその上で農家の生産費を償うように直接支払いが二段構えで行われていることを考慮しますと、我が国との差は極めて大きい。

要するに何が起きようとも日本以外の先進国においては、政府は国内農家の生産量(生産能力)を引き下げさせないために、公的な需給調整弁としての手段を駆使するわけです。

驚くべきことですが、国産振興に力を入れなければならない必然性が一層高まっているにもかかわらず、なんと日本政府は「これ以上、コメをつくるな!」と言うのみならず、麦、大豆、野菜、そば、エサ米、牧草などをつくる支援として支出していた交付金をカットするという。

正気の沙汰とは思えない。

これでは耕作放棄地が増えて当然ではないでしょうか。

このままでは農業を諦めてしまう人が続出し、耕作放棄地はさらに拡大し、食料自給率は急降下し、食料危機に耐えられなくなることは火をみるよりも明らかです。

この期に及んで、目先の歳出抑制しか考えていないのか。

繰り返しますが、肥料、飼料、燃料などの生産資材コストは急騰しており、国産の農産物価格は低いままです。

農家は悲鳴を上げています。

「これでは割に合わない…」と閉業してしまう農家が増えれば、我が国の耕作地面積は益々縮小し、生産ノウハウも失われていくことになります。