誰かの赤字は誰かの黒字、誰かの負債は誰かの資産。
このことは誰にも否定することのできない絶対的かつ普遍的な経済原則です。
さて、きのう(3月17日)日本銀行は、昨年のQ4(10~12月期)の『資金循環統計』を発表しました。
資金循環統計によれば、2021年12月末日時点での家計金融資産は2023兆円となり、ついに2000兆円を突破しました。
しかも昨年Q4は、前年同期比で4.5%の増です。
もうお解りですね。
家計の金融資産が増えた理由は、政府が国債を発行することで赤字(PB)を大幅に拡大したからです。
PBとは、プライマリーバランスの略で基礎的財政収支のことです。
簡単に言うと、PBの赤字化(黒字縮小)は歳出に占める公債費の多さを示し、PBの黒字化(赤字縮小)はその少なさを示します。
ご承知のとおり、デフレ不況、消費税不況、新型コロナウイルス禍不況の3つが国民に襲いかかったこの2年間、政府は国債発行額を増やして財政支出を拡大しています。
その分、家計におカネが貯まったわけです。
因みに家計金融資産の内訳をみますと、現預金が1092兆円と最も多い。
くどいようですが、誰かの支出は必ず誰かの収入になるのでございます。
これを例によって「おカネとは何か?」が理解できていない『日本経済新聞』が、家計金融資産が2000兆円を超えた理由について、次にように記事を書いています。
「新型コロナウイルス禍で個人消費の抑制が続いて現預金が積み上がり、年末のボーナス支給も押し上げ要因になった。(中略)21年10~12月は新型コロナの感染抑制のための行動制限措置が一時的に緩和されたものの個人消費の回復は鈍く、現預金が膨らんだ」(日本経済新聞)
要するに「家計がおカネを使わなかったから現預金が増えた」と言っています。
実にお〇〇さんな記事ですね。
何がお〇〇さんかと言うと、日本経済新聞は「使われたおカネは、この世から消えてしまう」と誤解していることです。
日本経済新聞よ、よく考えてみよ。
例えば、政府から10万円の定額給付金をもらったAさんが、街のお肉屋さんで10万円の高級国産牛を買ったとしよう。
その時、たしかにAさんの家計金融資産から10万円は消えるけれども、その10万円はお肉屋さんの所得(金融資産)になるだけではないか。
厳密に言うと、お肉屋さんだけでなく、お肉を作った畜産業者や、お肉を運んだ運送業者、畜産業者に餌を売った業者などなど、すべての生産者に所得が分配されます。
即ち、政府が支出した10万円はこの世から消滅することなく、家計間を行き来しているだけの話なのです。
政府がおカネをつかうと家計は豊かになる。
これが現実です。
因みにお断りしておきますが、政府は家計からおカネを借りて国債を発行しているわけではございませんし、しかも政府の負債は返済不要な特殊な負債です。
そういえば家計金融資産が1600兆円を超えた際、どこぞやのお〇〇さんな政治家が「今は家計の金融資産が1600兆円もあるから良いけれど、これが枯渇したら政府は国債を発行できなくなってしまう」と真顔で言っていました。
家計金融資産が1600兆円を超えたのは、2012年12月のことです。
あれから約10年、政府の国債発行残高は着実に増え、それに比例して家計金融資産も増えています。
この国は、お〇〇さんな政治家とメディアに支配されています。