ロシアとの停戦協議がまとまらず、ウクライナ情勢は再び軍事的衝突が激化しています。
軍事的衝突のみならず、西側陣営とロシア側の双方が発している情報戦もまた、益々もって活発化しています。
ゆえに日本のメディアが発する情報だけを鵜呑みにしていては、紛争の真実は見えてこない。
今回の軍事侵攻においてロシアは一切の妥協を許さないでしょう。
かつての我が国もそうでしたが、国家には時に武器を手にとって戦わざるを得ないこともあります。
当ブログにおいても繰り返し申し上げているところですが、もしも米国が、ロシアとの間に交わした「これ以上、NATOを東方へは拡大しない」という冷戦終結時の約束を忠実に守り、ウクライナのNATO非加盟を堅持し、ウクライナをロシアとの間の地政学的な緩衝地帯としていれば、プーチン大統領(ロシア)にウクライナを侵攻する理由を与えることはなかったと思います。
なお、ロシアにはウクライナ全土を征服しウクライナ人から主権を奪う企図はないはずです。
最終的な政治目標(戦略目標)はあくまでもウクライナのNATO加盟阻止であり、戦術目標は首都キエフを制圧し反露政権を倒すことでしょう。
2003年、米国が中東(イラク)の反米政権(フセイン政権)を力による現状変更によって倒したように…
さて、第二次世界大戦以降、軍事的占領は概して一つの州や県よりも小さな領土が征服の対象とされるのが一般的となりました。
2014年のロシアによるクリミア強奪もそうでしたが、国全体ではなく、その一部の小領土だけを攻略した場合、国際社会が被害国を守るために介入することはほとんどありませんでした。
「力による現状変更を絶対に許さない…」のであれば、ロシアがクリミアを強奪した際、日本を含めて国際社会はもっと厳しい制裁を加えておくべきでした。
G8からロシアを外した程度の制裁では、なかば容認したも同然だったと思います。
こうした中途半端な制裁が、プーチン大統領に次なる機会を与えてしまったと言っても過言ではないと思います。
とはいえ、2014年の段階において既に米国は軍事的にも経済的にも覇権国としての力を喪失していましたので、断固たる制裁措置など不可能だったでしょうけど。
そこで、ロシアによるクリミア強奪に代表されるような、小さな侵略や征服行動の背景には明確な戦略があることを我々は冷徹に認識する必要があります。
その戦略とは、侵略された側がそれを取り戻すために紛争を激化させるのではなく、「仕方がない…」と諦めるような小さな領土にとどめるというものです。
この戦略なら、あからさまに国を征服しようとした場合に比べ、全面戦争になるリスクは大きく低下し、しかも外交的威嚇策よりも成功する見込みは遥かに高い。
むろん、小ぶりな征服は目新しいものではなく、古くからの常套手段でもありますが、近年、既存の国際秩序の変更を求めるリビジョニスト国家にとってはその重要性は益々高まっているように思えます。
何が言いたいのかと申しますと、次は中国による台湾侵攻の可能性が高まっているということです。
ロシアがウクライナ侵攻において一切の妥協を許せないのは、ウクライナのNATO加盟阻止はロシアにとって核心的利益だからです。
そこに米国が軍事介入しないのは、米国にとっては核心的利益ではないからです。
中国は「台湾は中国にとっての核心的利益だ」と公に主張しています。
ゆえに、そこに一切の妥協は許されない。
しかも、かつてとは異なり、今や中国は局地戦においてなら米国と互角に張り合うに充分な軍事力と経済力を手に入れています。
例えば、もしも中国が台湾総統選挙を機会に台湾海峡とバシー海峡を封鎖し軍事演習を行った場合、米軍は必ず日本(自衛隊)に対して『自由航行作戦』への参加を求めてくるはずです。
自由航行作戦とは、中国が権益や支配権を主張する海域を敢えて航行し、それらを認めないことを軍事的態度で示すことです。
そのとき、日本政府はどうするのでしょうか…
おそらく防衛省は積極的参加を主張するでしょうが、外務省や経済産業省は「リスクの高さ」を主張して反対することになるでしょう。
むろん、最終的には国軍の最高司令官たる岸田総理の政治的決断が求められます。
それから、地方議会の議員として私にはもう一つの懸念があります。
2015年に制定した安保法制では、①重要影響事態、②存立危機事態、③武力攻撃事態の3つの事態認定が定められましたが、現行法制では国民保護を発令できるのは武力攻撃事態を認定されてからとなっています。
果たしてそれで間に合うのかどうか。
少なくとも「存立危機事態」の時点で確実に我が国は米軍の軍事行動に参加しているわけですから、有事の際には国内の米軍施設も攻撃対象とされます。
因みに、私の住む神奈川県には、横須賀基地、厚木基地、座間基地等の米軍基地があり、東京都ではあるものの横田基地も近くにあります。
地域の国民保護計画については、当該自治体がそれを策定することになっています。
計画が本当に機能するのかどうか、各自治体による再度のチェックが必要です。
地方議会ではこうしたことこそが議論されるべきであって、幼稚で中二病的な「非難決議」を採択している場合ではない!