去る1月21日、財務省は今後の財政状況に関する試算を国会に提出しました。
復興債を除く国債発行残高は、「(名目3%成長が続くという楽観的な前提でも)2022年度末の1021兆円から2031年度末には1173兆円に膨張するぅ〜」と言っています。
とりあえず突っ込んでおきますと、日本経済が名目GDPで3%成長できないのは、財務省が在りもしない「財政危機」を煽って財政支出を拡大させないからです。
なお、財務省が悪質なのは「国の借金」という呼び方です。
正しくは「政府の負債」であり、「国の借金」でもなければ、「日本の借金」でもありません。
政府の負債(Government debt)を「クニのシャッキン」「ニホンのシャッキン」と言い換えている時点で実に悪質なプロパガンダです。
それに、国債残高が1173兆円に膨張するということは、それだけ国民の資産が増えることを意味しているのであって、それのなにが問題なのでしょうか。
つまり財務省は「国民の資産が膨張するぅ〜」と警鐘を鳴らしているわけです。
そもそも財務省は、政府の負債額「のみ」を大きく喧伝し、債権額を表に出さないのは政治的にも会計学的にもいかがなものか。
上のグラフのとおり、たしかに日本政府には、1100兆円を超える国債残高(財投債・国庫短期証券を含む)、すなわち負債があります。(2021年9月末時点)
しかしながら同時に、政府には約551兆円の金融資産があります。
その内訳は、下の表のとおりです。
つまり差し引きすると、純負債は755兆円です。
さらに政府には株式の55%を握っている日本銀行という「子会社」があります。
子会社である日本銀行に国債を買いとらせることで、日本政府の負債は実質的に消えることになります。
政府のバランスシートに計上されている「国債・財投債」「国庫短期証券」のうち、既に538兆円を日本銀行が保有しています。
日本銀行が保有している公債等については、政府が返済する必要はありません。
政府と日本銀行は親会社・小会社の関係ですので、連結決算で相殺されるわけです。
日本銀行による国債の買い取りを「財政ファイナンスだぁ〜」と批判する緊縮財政派が多くおりますが、実に意味不明な言葉です。
「財政」の英訳はfinance(ファイナンス)ですので、財政ファイナンスは「ファイナンス・ファイナンス」になってしまいます。
この言葉を使って財政破綻論を主張してくる人たちも実は意味がよく解かっていないのでしょう。
中央銀行(日本銀行)による国債買い取りは、英語でMonetization(マネタイゼイション)と言うのが正解です。
日本語に訳すと、国債の「貨幣化」です。
例えば、日本銀行が市中銀行から10兆円の国債を買い取ると、その瞬間、市中銀行が日本銀行にもつ当座預金(日銀当座預金)に10兆円が計上されます。
つまり、日銀当座預金(10兆円)という新たな貨幣が創出されるがために、貨幣化(マネタイゼイション)と言うわけです。
銀行預金も立派な「貨幣」であることを、ぜひとも国民の多くが知ってほしい。
なぜ財務省は「財政ファイナンス」という言葉を使うのか…
マネタイゼイションを「国債の貨幣化」と正しい名称で呼んでしまうと、日本銀行の国債買い取りで、負債であるはずの国債が「貨幣」になってしまう事実が世に知られてしまうからでしょう。
それでは自分たちが主張する「財政破綻論」が根拠なきプロパガンダであることがバレてしまう。
だから敢えて財務省は「財政ファイナンス」と言い換えているのだと思います。
さて、何度でも言います。
政府には755兆円の純負債が計上されていますが、この政府の純負債があるからこそ国民全体の純資産が増えています。
誰かの負債は、必ず誰かの資産です。
信じ難いことかもしれませんが、政府は基本的に常に純負債でなければならないのでございます。
そもそも、国債の元金と利払いを国民から徴収した税金で返済している国は、世界で唯一、日本政府だけであることを日本国民は知るべきです。