数日前、「三菱地所が、千代田区のオフィスビルにエレベーターを乗り降りして弁当を届けるロボットを導入した」というニュースに触れました。
そのロボットは弁当を届けるだけではなく、清掃作業もするらしい。
この種のロボットの導入は「コロナ禍においては感染リスクの低減につなげることが期待される」と報道されていましたが、それよりも人手不足解消への期待のほうがはるかに大きいと思われます。
本来、デフレの時期にはヒトが余ります。
デフレ → 需要不足 → 供給過剰 → 人手余り
ヒトが余剰になると、企業は資本や技術に投資する必要がなくなります。(注意:ここで言う「資本」とはおカネのことでなく「生産資産」のこと)
なぜなら、資本や技術への投資は「人手不足を解消する」ために実施されるものだからです。
ところが、上のグラフのとおり、現在の我が国は生産年齢人口(15〜64歳人口)比率が低下していることから、デフレ経済という不況のなかにあるにもかかわらず人手不足が生じています。
というより、デフレ経済の長期化が少子高齢化に拍車をかけ生産年齢人口比率を低下させています。
しかしながら、それでも人手不足社会を「生産性の向上」により克服することができれば、我が国は再び経済を高成長させることが可能です。
なにより、経済成長の源泉は「生産性の向上」にこそあるのですから、当然の話です。
因みに、どこかの市の副市長みたいに「人口が減るから経済は成長しない…」と言い切る愚者は、しばらく政治経済に口出ししないでほしい。
さて、生産性を向上させるには、企業の資本蓄積を拡大させることが必要です。
くどいようですが、ここで言う資本とはおカネのことではなく「生産資産」のことです。
生産資産の蓄積に技術力などを含む全要素生産性が加えられたものが「労働生産性」となります。
だからこそ、政府と企業が一丸となって各種の「投資」を拡大することで資本蓄積を積み上げていかねばならないわけです。
一方、「機械化が進んで生産性向上が進んでしまうと、失業してしまう人が増えるのではないか…」と懸念される人たちもおられるでしょう。
しかしながら、デフレギャップ(供給>需要)経済を前提とすればそのとおりですが、生産性向上により経済が成長しインフレギャップ(供給<需要)経済に転じれば話は別です。
産業革命の際のイギリスもそうでした。
たしかに蒸気機関による技術革命により、それまで手作業で行っていた織物職人さんたちが失業(技術的失業)してしまい暴動を起こしました。
いわゆる「ラッダイト運動」です。
しかしながら、やがてインフレギャップ経済となり、綿布産業以外に雇用が拡大することになりました。
このように言うと「織物職人が新しい職場で通用するのか…」という反論もあるでしょう。
だからこそ、人材投資が必要なのでございます。
いつも言うように、生産性向上に必要な4つの投資(①公共投資、②設備投資、③技術開発投資、④人材投資)の中には人材投資が含まれます。
「人材」とは、労働の蓄積により創出されます。
具体的には、企業が従業員を非正規雇用ではなく正規雇用で長期間にわたり雇い続けることで人材は蓄積されます。
そもそも、多くの人々にとって雇用とは人生そのもので、人間は働き続けることで自らの内に様々な技能やノウハウを蓄積し人材となります。
さらに言えば、仕事は人間にとって誇りの源泉であるとともに、国家の経済力の一部なのです。
ゆえに「機械設備を導入するからヒトは要らない」という話ではないのでございます。
それに、もしも今後、現実的に生産性向上のための投資が拡大したとしても、我が国の場合、技術的失業を激増させるかたちにはなりません。
なにしろ生産性年齢人口比率が低下して超人手不足になっていくわけですから。