展開のはやいウイルスへの対処

展開のはやいウイルスへの対処

まん延防止等重点措置が、これまでの沖縄県など3つの県から、今日からは東京都や神奈川県などを加えた16の都県に適応されます。

感染拡大中の変異ウイルス(オミクロン株)について、だいぶ解かってきたことがあります。

メディアが報じている「感染者」とは本来は「陽性者」のことなのですが、ここではメディアに合わせて感染者とします。

そこで、一週間の感染者数が前の一週間の何倍になったかを調べてみますと、デルタ株の感染が急拡大した第5波のときは最大で2.3倍でしたが、オミクロン株の感染が急拡大した第6波では最大10.0倍となっています。

デルタ株よりもオミクロン株のほうが感染させる相手が格段に多く、次の人に感染させるまでの期間が短いことが解かります。

要するにオミクロン株は感染の展開がはやい。

なお、オミクロン株はその変異によって、人間の上気道(喉のあたり)の細胞に感染しやすく変化したとみられています。

口に近いところでウイルスが増殖することになるため、多くのウイルスが飛沫と一緒に口から外に出やすくなるわけです。

専門家らが、より飛沫感染による拡大を懸念しているのはそのためかと思われます。

むろん、オミクロン株が人間の体の中のどこの細胞に感染しやすいか、そのことは重症化にも関係しているとみられています。

オミクロン株は上気道で感染しやすい一方で、デルタ株に比べて肺の細胞には感染しにくいという実験データもあります。

そのため肺炎などを起こしにくく、重症化しにくいのではないかと考えられています。

感染しても無症状、あるいは鼻風邪のような症状で、新型コロナに感染したと気づかないこともあるという。

感染者が重症になる割合が低いことを示唆する研究は、イギリスや米国など各国から報告されています。

ただ、これらの研究はワクチンの接種率が上がったことや、感染の多くが若者である点などが影響している可能性があり、どこまで重症化しにくいのかについては引き続き慎重に見極める必要があるのでしょう。

ちなみに、高齢者への感染が広まれば、今後は重症者が増えると指摘する専門家もいます。

こうした状況下において、経済活動など国民の行動制限をどこまで行うか、政府として考えを提示しなければなりません。

少なくとも、第6波の被害を最小限に留めるためにはワクチンの3回目接種が急務でしょう。

イギリスの保健当局によれば、ファイザーワクチンの接種後経過期間とワクチン有効性を調査したところ、接種から時間が経つほどにデルタ株に比べてオミクロン株のほうが有効性が低くなっています。

例えば接種後25週以上では、オミクロン株に対するワクチンの効果は10%にまで落ち込みます。

しかしながら、ファイザーワクチンの3回目接種を行うと発症予防効果は大きく上がります。

1回目、2回目をファイザー、そして3回目をモデルナにした場合には、その効果はさらに上がるという調査結果がでています。

こうしたデータから、オミクロン対策として3回目のワクチン接種が期待されます。

ゆえに政府や自治体は3回目接種の時期を前倒し、医療提供体制を維持するための医療従事者、それに重症化リスクの高い高齢者(65歳以上)への接種を急いでいます。

ただ、ワクチンの配送計画をみますと、医療従事者へは今月中に配送を完了する予定ですが、高齢者分のおよそ7割は来月の配送になります。

ということは今の第6波には間に合いません。

同じように重症化リスクのある基礎疾患のある人にも3回目接種を急ぐ必要があります。

リスクの高い人達が接種を受けるまで、どのように感染を抑えるかが課題です。

もう一つ懸念されるのは、自宅療養者へのケアです。

第5波では医療の逼迫などの混乱で、自宅で死亡するケースがありました。

これを教訓に各都道府県では、検査で陽性となった当日か翌日には健康観察や訪問診療が行えるようにすること、飲み薬も診断の当日か翌日に届けられるようにするなど体制の強化を進めています。

とはいえ、感染者と同じように自宅療養者も増え続けています。

例えば東京都では19日の時点で15000人ほどに上っています。

オミクロン株では軽症患者が多いだけに、今後、各地で自宅療養者が想定を超える数になる可能性があります。

自宅療養とされた人が亡くなるようなことが繰り返されないようにしてほしい。

オミクロン株への置き換わりは進み、今月16日までの一週間で全国の感染者の90%以上がオミクロン株の感染とみられています。

今後、感染者のピークがいつどのくらいになるのかは、今はまだ見通すことはできません。

3回目のワクチン接種を受けていない高齢者の間にオミクロン株が拡がったとき、重症の患者がどのくらい増えるのか、そのとき医療はどうなっているのか、想定するのは簡単ではありません。

いわゆる不確実性ですね。

だからこそ、改めて思うのです。

不確実性が高まるなかで展開のはやいオミクロン株に機敏に対応するためにも、政治行政には常に「冗長性」が確保されていなければならないことを。

こうした冗長性をことごとく破壊したのが、ネオリベラリズム政治です。