通常の経済(デフレでない経済)では、企業貯蓄率はマイナスにならなければなりません。
※企業貯蓄率 =(企業の金融資産ー企業の金融負債)÷ 名目GDP
企業貯蓄率のプラス化は、企業の過剰貯蓄を意味し、総需要を破壊する力となります。
これがデフレの最大要因です。
先日のブログでも申し上げましたとおり、日本の企業貯蓄率は異常なほどにプラス化しています。
一方、日銀短観をみるかぎり、市中銀行による企業への貸出態度は、2013年以降の金融緩和政策によって良好な状況が続いています。
即ち総体的な話として、銀行は「設備投資に必要なおカネを貸してもいいですよ」と言っている一方で、企業は「いえ結構です」という状態が続いているがために企業貯蓄率がプラス化しています。
要するに多くの企業が投資をひかえているわけです。
需要の拡大が見込めない状況下では、企業が投資をひかえてしまうのは当然のことです。
冒頭のグラフのとおり、バブルが崩壊しデフレに突入して以降、民間設備投資のGDP比が17%弱の天井をなかなか打ち破れなかったことが、過剰貯蓄として総需要を破壊する力となっている「プラス化した企業貯蓄率」の低下を妨げる要因となっています。
ゆえに、政府が財政出動し需要を創出することで企業心理を刺激しなければならず、企業に「おっ、これは儲かるぞ!」という見込みがたってこそ、はじめて企業は設備投資を拡大します。
結果、企業貯蓄率が正常なマイナス領域に戻り、総需要を破壊する力が払拭されればデフレからの完全脱却ということになります。
断言しますが、設備投資サイクルが上振れないかぎり、絶対に景気は回復しません。
というより、その上振れ加減によってはU字型に回復するのではなく、V字型に回復することも可能です。
とりわけ、生産年齢人口(15〜64歳人口)比率が低下する日本では、需要の拡大は生産性を向上させる最大のチャンスです。
資本ストックを拡大すればするほど、生産性は向上します。
むろん、そのためには技術革新も必要になりますので、設備投資とともに「技術開発」への果敢なる投資も求められます。
因みに技術開発投資もまた「設備投資」としてGDP統計に反映されます。(かつては反映されていませんでした)
こうした生産性向上のための技術革新は、第四次産業革命と呼ばれています。
各国が第四次産業革命に向かうなか、もしも日本がだけが取り残されることがあれば我が国の発展途上国化は確定です。
そうなれば、やがて多くの日本国民が中国や韓国の経営者のもとで低賃金で雇われることになります。