経済成長の源泉は、生産性の向上です。
これ以外にありません。
よく「人口の増減こそが経済成長を決める」と誤解されている人がいます。
彼ら彼女らは「これからの日本は人口が減少するから経済の成長は見込めない」みたいに言うわけです。
むろん、大いなる間違いです。
人口増が経済成長の源泉であるのなら、人口が爆発的に増えているアフリカの国々などは全て先進国になっているはずです。
一方、高度経済成長期(1960年代)の日本の経済成長率は毎年10%にまで及んでいましたが、人口推移は毎年1.1%増ぐらいでした。
要するに人が増えようが減ろうが、一人あたりの所得が増えていくことこそが経済成長であり、せっかく人口が増えたとしても一人あたりの所得が増えていないのであればそれは経済成長とは言わない。
そして、一人あたりの所得を増やすために必要なのが「生産性の向上」です。
では、経済における「生産性」とは何でしょうか。
生産性とは、労働者一人あたりの生産量のことです。
なので「生産性が高い」と言った場合、労働者一人あたりの生産が増えたことを意味します。
では、生産とは何でしょう?
生産とは、モノやサービスを生み出す活動のことです。
因みに、自分たちが生み出したモノやサービスを誰かがおカネを払って購入してくれることで初めて生産(所得)が成立します。
ここがポイントです。
これらの生産(所得)の合計がGDP(国内総生産)です。
つまり、別の言い方をすると「生産性が高いということは、一人あたりが生産できるGDPが多い」となります。
では、生産性を高めるためには具体的に何をすればいいのでしょうか。
実は生産性を高める方法は次の4つしかありません。
①設備投資
②技術開発投資
③人材投資
④公共投資
④公共投資と、②技術開発投資の一部は国や地方自治体が行うものです。
民間部門が行う②技術開発投資と③人材投資には、投資効果を発揮させるまでにある程度の時間を要します。
①設備投資の蓄積こそが資本ストック(資本蓄積)であり、資本蓄積が高まれば高まるほど生産性は向上します。
例えば、重い石ころが1000個あり、それらを全て100キロ離れた場所に移動しなければならい、という仕事があったとします。
そこで、半分の500個を運送会社Aに発注し、残り半分(500個)を運送会社Bにそれぞれ発注しました。
発注金額は同じ、1億円です。
運送会社Aには社員10人の職員がおり、それまでクレーンやトラックなどの設備に投資をしてきたために資本蓄積が豊富にあります。
もう一方の運送会社Bには、社員が500人いるのですが、それまで全く設備投資をしなかったために資本蓄積がなく、やむをえず社員が一人一個ずつ石ころをもって100キロの距離を歩いて運ぶことになります。
さて、どちらの会社のほうが生産性が高く、職員の給料が高いでしょうか。
さすがにお解りですね。
単純計算をすると、運送会社Bの所得は一人あたり20万円、運送会社Aの所得は一人あたり1000万円となります。
むろん現実には諸経費などを差し引くことになりますので、こう単純にはいきませんが、少なくとも一人あたりの所得の差は歴然です。
冒頭のグラフのとおり、1980年代の好景気時の日本の資本蓄積と生産性は高い水準にありましたが、2000年以降は悲惨な状況になっています。
これを再び向上させないかぎり、デフレ脱却及び日本経済の復活はありえません。
とはいえ、需要の拡大が見込めないデフレ状態が続いたままでは、企業が設備投資を拡大することもあり得ません。
だからこそ、需要を創出するための大規模な財政出動が強く求められます。
いつも言うように、デフレ期に支出を拡大できるのは政府部門だけです。
今日も与党自民党(政務調査会)では『財政政策検討部会』が開催されるようですが、信用サイクル(中小企業貸出態度DI)がギリギリのところで持ちこたえている現状において日本経済に残されている時間は少ない。