デフレ放置では、企業は投資を拡大できない

デフレ放置では、企業は投資を拡大できない

きのう、ウクライナ情勢をめぐり米露高官による協議がスイスのジュネーブで行われました。

協議は7時間に及んだらしい。

双方の政府高官がウクライナ周辺での緊張緩和に努めることで合意はしたものの、互いの主張には隔たりが大きかったようで事態打開の兆しはみられないようです。

私の推測ですが、どちらかといえばロシア側が足元をみられているような気がします。

さて、去る3日に財務大臣の諮問機関である『財政制度等審議会』がまとめた建議に「政府歳出の拡大が民間のアニマル・スピリットを失わせる」とありましたが、現実の話はまったく逆です。

政府が歳出を拡大しないがためにデフレが払拭されず、そのことが企業のアニマル・スピリッツを喪失させています。

需要の拡大が見込めない経済情勢では企業マインドが投資拡大に向かうことなどあり得ない。

資本主義とは、資本を投じることによって経済を成長させるシステムのことです。

需要の拡大が見込まれたとき、企業(経営者)は銀行からおカネ(銀行預金)を借りて設備投資を行い、新たな生産手段を創設します。

企業が設備投資を行うと、即ち民間の経済活動の内生から銀行預金という新たなおカネが創出されるがゆえに「資本主義」と言うのかもしれません。

新たな生産手段の構築は、生産性の向上をもたらします。

生産性が向上すると、否が応でも経済は成長します。

ていうか、生産性の向上以外に経済を成長させる術はありません。

よく誤解されますが、人口が増えるから経済が成長するのではなく、経済が成長した結果として人口が増えるわけでございます。

冒頭のグラフのとおり、昭和30(1955)年から昭和バブルが崩壊した平成2(1991)年に至るまで、民間企業の設備投資はものすごい勢いで拡大しています。

日本が高度経済成長期を迎えることができたのも、2度にわたるオイルショックを克服できたのも、このように企業が着実に投資を拡大してくれたことの結果です。

ところが、1991年の資産バブルが崩壊したことで、それまでバブルに浮かれて「株」や「土地」に過剰投資をしたきた多くの企業が、今度は投資を抑制し借金の返済に勤しむことになりました。

いわゆるバランス・シート不況の到来です。

それでも1997年までは政府が財政支出を拡大させていたため、実はバブル崩壊以降も経済は成長していました。

ところが、1997年4月、当時の橋本内閣は消費税の税率を3%から5%へと引き上げ、緊縮財政(収支を均衡させる財政政策)をはじめてしまいました。

これにより、日本経済は需要が不足するデフレ経済に突入します。

以来、25年間にわたりデフレ経済が続き、需要拡大を見込めない多くの企業が設備投資を抑制しています。

下のグラフのとおり、デフレに突入した1998年以降、民間企業の設備投資は頭打ちになっています。

これでは経済が成長するはずもない。

即ち、デフレを払拭できるのは通貨発行権を有する政府による歳出拡大(需要創造)だけです。

そのためには、なんとしてでもPB(プライマリー・バランス)黒字化目標を凍結させなければなりません。

なのに財政制度等審議会は「政府歳出の拡大は、企業の投資スピリットを失わせる」と寝ぼけたことを言っています。