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議会報告 01 川崎市政

川崎市の産業集積促進施策に異議あり2008/10/02    

Dsc_0118_11   本年4月から、「川崎市先端産業創出支援制度」いわゆる「イノベート川崎」がスタートしました。
この制度は、川崎市内の京浜臨海部エリアを中心に、環境やエネルギー、そしてライフサイエンス分野といった先端産業の創出と集積を促進するための施策です。
真の福祉、あるいは真の地方自治の実現のためには、自治体としてしっかりとした財政的基盤を構築することが何よりも大切です。とりわけ、地域経済の活性化に向けた自治体自らの産業集積への取り組みはますます重要になっています。
そこで本議会(決算審査特別委員会)において、本市の新たな取り組みと産業集積促進施策に対して、以下のとおり質問しました。

平成20年第4回川崎市議会定例会・決算審査特別委員会(9月30日)における私の質問と、行政側の答弁を要約して紹介します。

 
○三宅隆介委員
まず、本市の制度整備が、なぜこの時期なったのか? また、本制度が5年間という期限設定をなした根拠は何なのか?

●経済労働局長
確かな産業基盤を築くために、「川崎市企業誘致・産業立地促進計画」を策定し、平成19年11月に国に認定されました。この計画を機に、環境、エネルギー、ライフサイエンス分野で先端技術を事業化する社を対象に本支援制度を創設しました。
また、期限設定の根拠につきましては、競争の激しい先端技術の事業化を加速させ、短期間で集中的に成果を挙げるため、初期段階に支援をすることとし、実施期間を5年間としたものです。

■三宅隆介の視点
残念ながら、なぜ5年か、という期限の根拠については明確な答弁はありませんでした。また、実施時期についても、「もともと集積の強みもあるので、国に計画を認定されたから制度を作った」としか聞こえません。そもそも産業集積促進のための政策を展開する際に、経済状況を勘案しないのは、まったくの驚きです。
去る平成16年に、既に制度を創設している横浜市をはじめとして、県内の各市、各町においても、企業誘致にむけたインセンティブの整備が進んでいます。その中で、本市の制度整備がこの時期に至るまで遅れてしまったことに対しては不満が残ります。特に、国内経済が回復基調にあった折角のタイミングを逃したことは、誠に残念です。

○三宅隆介委員
次に、制度内容について伺います。なぜ、環境、エネルギー、ライフサイエンス、といった分野に限定したのか?また本市においては、なぜ、固定資産税の減免を同時に行わなかったのか、伺います。

●経済労働局長
先端科学技術分野のうち、特に人類共通の課題解決と国際貢献に資するような新たな産業を創出するため、環境、エネルギー、ライフサイエンスの3分野を対象としました。
 既存の立地企業や新たに立地した企業との税の公平性を勘案して、税の減免措置については導入しないこととしました。

■ 三宅隆介の視点
まず対象分野についてですが、あえて特定の分野に限定せず、もっと間口を広げて、より大きな経済波及効果を見込める企業を幅広く呼び込んだ方が得策だと考えます。
 また本制度は、投資に向けたインセンティブが助成金だけになっていることも残念です。横浜市をはじめ、県内の各市、各町の既に整備をされているインセンティブのほとんどが、税の減免(具体的には固定資産税の減免)と助成金とがワンセットになっています。
企業にとって何よりの魅力は、助成金ではなく、税の減免です。そのことに対する本市の理解が乏しいことは誠に残念です。なぜ企業は税の減免に魅力を感じるのかといえば、それは企業会計上の問題にあります。企業会計上、助成金というのは、雑収入に計上されます。もし仮に企業が利益を上げれば、会計上その助成金に対しても税金がかかってしまいます。それに対して、税の減免の場合、仮にその企業に利益が上がっても、減免分がそのまま(真水のまま)企業の利益になります。
そして何よりも重要なことは、これらをセットにすることによって、経済局サイドだけではなく、その自治体全体で、つまり、特定の局が一局だけで取り組んでいるのではなく、全庁的に産業集積に取り組んでいるという姿勢を企業に対し強くアピールすることができます。
それから税の公平性といいますが、川崎市は政策税制の意味を理解していません。既に助成金で差がついているのですから、税制でも差をつけてもおかしいことはありません。
このままでは都市間競争の時代に負けてしまう危険性があります。地域間に政策的な差を設けることがまさに地方分権であることを指摘します。

○三宅隆介委員
次に、本制度の経済的波及効果について伺います。「イノベート川崎」では、どの程度の経済波及効果を見込んでいるのか、さらには、地域における雇用の創出も、産業集積によって、どの程度の雇用創出がなされると見込んでいるのか?

産業集積には、当然のことながら経済的インセンティブは必要となりますが、それは産業集積がその地域の経済振興につながり、自治体の財政基盤をより強固なものにするという前提がなくてはなりません。そして、多額の財政出動を行う以上、それが市民にもしっかりと理解される形で、示されなくてはならないと考えます。
例えば神奈川県においては、「インベスト神奈川」を導入した際、その経済波及効果というものを、県内シンクタンクである浜銀総研に委託をし、10年間で6兆2,839億円という客観的な数字として示した例は極めて参考になると考えます。

● 経済労働局長
本制度創設にあたっての経済波及効果につきましては、1件につき100億円の投資により、工場又は研究所の新設が行われ、上限額の10億円の助成を行う場合をモデルケースとして、川崎市産業連関表や工業統計並びに近年の研究所新設事例における延床面積、従業者数等の数値を用いて試算しました。
まず、建設に伴う経済波及効果は、工場の場合、研究所の場合ともに約129億円、事業活動に伴う経済波及効果は、工場の場合につきましては年間約143億円、研究所の場合につきましては年間約174億円が見込まれると想定をしてます。
また、制度全体で5件の進出があった場合には、工場又は研究所の新設件数の組合せにもよりますが、建設に伴う経済波及効果は、工場、研究所を問わず5件の進出により約645億円、事業活動に伴う経済波及効果は、例えば工場が5件進出した場合は年間約715億円、研究所が5件進出した場合は、年間約870億円の経済波及効果が見込まれると想定をしています。
 雇用の創出効果につきましては、経済波及効果の推計におきまして、工場の場合は約310人、研究所の場合は約700人と想定をしています。
税収効果につきましては、初年度分の増収は、約3億円が見込まれると想定をしております。

■三宅隆介の視点
当局の波及効果の見積もり方は、ピントがずれています。
10億円の助成を行う場合は、すべてが100億円の投資となるといった前提で、経済波及効果を論じるのは適当でありません。少なくとも、これまでの本市における立地動向や規模をきちんと調べ、そこからこの政策の展開によって、どの程度それが加速されるか、という政策効果を見込んだ上で、さらに景気動向なども勘案して、モデル設定を行うことがオーソドックスな波及効果算出の手法です。
 例えば、工場立地法上の届出によって、1000平米以上の企業の過去の立地動向は、具体的に把握できます。そうした具体的な事実を前提にした想定モデルを設定し、年間の立地ペースを勘案したうえで波及効果を算出するべきです。
 そうでなければ、市民に対して、この政策の展開にどれほどの財政的支出が必要で、その結果どのような政策効果が上がるのか、ということを説得力を持った形で説明することはできません。

○三宅隆介委員
次に誘致体制について伺います。企業誘致に向けた体制整備はどのようになっているのか?
例えば、「インベスト神奈川」を成功させている神奈川県では、制度がスタートした4ヶ月後には、いわゆる「ワンストップ体制」というものを整備して、例えば事務職だけでなくして、開発関係のわかる建築士、あるいは中所企業診断士、さらには税務の専門家などを集めて、企業誘致室を発足させました。
本市においても、いわゆるワンストップ体制のようなものを作る予定はあるのか?

● 経済労働局長
今後、企業誘致や地域再生の進捗状況を踏まえながら、新たなワンストップ体制の充実について検討してまいりたいと考えております。

■ 三宅隆介の視点
 これまでは、どちらかというとお客さんである企業が「たらい回し」になってきましたが、これからはお客様である企業を中心に役所が回る、という時代にしなければなりません。これは企業立地に限ったことではありません。これからの行政はそうした新しい役所の文化をつくることが必要です。
味の素の川崎工場の隣で、工場(コロンビアのデジタル部門)が流出して、その跡地に高層マンションが建設され、味の素の操業環境をより困難なものにしました。これは、街づくりが産業集積促進政策と一体化していない証左です。つまり、まちづくりも含めて、全庁的に取り組んでいるという姿勢が乏しいという点を指摘しておきます。

○三宅隆介委員
次に、神奈川県との連携について、どのような連携体制となっているのか、伺います。

●経済労働局長
今後も県と協調を図りつつ、積極的な支援を展開し、企業の立地促進を図り、臨海部の産業再生・活性化、ひいては本市経済全体の活性化を図ってまいりたいと考えます。

■三宅隆介の視点
この制度を全般的に見ると、まず一点目として、タイミングを逃さないスピードに欠けたものであること。二点目として、自治体としてのヤル気を全国につたわるインパクトが弱いこと。そんな印象を受けます。つまり、本市の産業集積への取り組みは、どうもトゥリトル・トゥレイトのような感じをうけます。例えば、本市が東京や横浜のような大都市に隣接していることは、本市にとって、大きな利点であることは確かですが、そうした地理的利点があるからこそ、あまり企業誘致に力を入れてこなかった、というのが本市の実態ではないかと思います。その利点に胡坐をかいてきたような感が否めません。しかし、そうした考え方は大きな間違えだと思います。立地的利点があるからこそ、本腰を入れて産業集積に対しもっと力を入れるべきではないかと考えます。
何度もいうように、産業集積の促進にむけ、全庁的に取り組んでいるという自治体としてのメッセージが必要です。

(以上、議事録要約)