『21世紀の資本』を著したトマ・ピケティ氏らによって運営されている「世界不平等研究所」(本部・パリ)が世界の格差状況の報告書をまとめました。
報告書によると、2021年、世界の上位1%の超富裕層の資産は世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の資産は全体のわずか2%とのことです。
とりわけ、最上位の2750人だけでも約1500兆円超を占め、これだけで全体の3.5%を占めています。
なお、上の円グラフのとおり、上位10%が全体の75.6%を占めることになります。
因みに、1990年代半ば以降に世界全体で増えた資産の38%を上位1%が得たこととなり、上位1%の二酸化炭素排出量が全体の排出量の17%を占めるのだとか。
むろん格差は、各国の国内においても目立っています。
各国の上位1%の超富裕層が占めている富の割合は、コロナの感染が広がりはじめた2020年には多くの国で増加しました。
コロナパンデミックにより資産家はますます豊かになり一般国民との富の格差はさらに広がっていきました。
その理由はむろん、グローバリズムにあります。
グローバリズムとは、カネ、ヒト、モノ、サービスの国境を超えた自由を拡大させることで株主利益を最大化するシステムのことです。
いわば株主資本主義の世界化です。
グローバルマネーという大量の資金が国境を超えて瞬時に移動しており、そうした資本収益で稼ぐ人たちが所得(GDP)で稼ぐ各国のネイティブ国民を貧困化させています。
この「グローバリズム」を改めないかぎり、根本的な格差構造を変えることはできません。
さて、もう一つの重大な世界的格差はワクチン格差です。
ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏は「ワクチン普及の格差などのため経済回復で世界的な不平等が生じている。途上国では政府への不満が高まり政情不安が広がりかねない」と指摘しています。
オミクロン株の急速な拡大で、新たな感染者数は各国で過去最多を更新し、世界で一日に報告される感染者の数は150万人を超えました。
世界でのワクチンの普及率をみますと、少なくとも1回ワクチンを接種した人は世界の平均でおよそ60%なのですが、中東やアフリカでの接種がだいぶ遅れています。
とくにアフリカは、未だ人口の13%にとどまっています。
ワクチンを調達できない貧しい国に対しては国際的な枠組みである「covax」を通して調達・供給が行われていますが、先進国からの寄付が滞っていたことなども背景に、分配できたのは目標の4割程度だそうです。
今後、各国で3回目のブースターショットが加速すれば、その分、貧しい国への供給はさらにしわ寄せを食うことになります。
WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は「ワクチンが行きわたらなければ感染が続き、新たな変異株が発生してパンデミックが収束しなくなる」と警告し国際社会の協力を強く訴えています。
また国連によると貧しい国々では、いわゆる極度の貧困、日本円で一日200円以下の生活をおくる人たちが数十年ぶりに増加に転じているという。
これらの問題も突き詰めれば、グローバリズムを追求してきたことの結果です。
グローバリズムは国内格差のみならず、国際間格差をも極度に拡大する実に恐ろしいシステムです。
それを正当化する思想こそがネオリベラリズム(新自由主義)ですが、恐ろしいことに未だ我が国ではネオリベラリズムが蔓延し跋扈しています。