ウクライナ危機迫る⁉

ウクライナ危機迫る⁉

防衛省によれば、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の戦争手法を「ハイブリット戦」と呼び、ハイブリット戦は相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになるのだという。

軍事と非軍事の境界を曖昧にした手法の具体例とは、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信や重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などのことです。

現在、そうしたハイブリット戦を仕掛けている典型的な国家が中国でありロシアです。

ロシアはその手法でウクライナからクリミアを強奪したし、中国もまたその手法により我が国固有の領土である尖閣諸島への侵略を試み、東シナ海、南シナ海から米軍を排除し台湾をも手中に収めようとしています。

そう言われてみれば、いまや純然たる平時でも、純然たる戦時でもない極めて曖昧なグレーゾーン事態が確かに常態化しています。

因みに、我が国には「憲法9条」の大切さを説く者が絶えないが、残念ながら憲法9条はグレーゾーン事態が常態化したハイブリッド戦を想定していない。

憲法9条が想定しているのは、あくまでも第一次世界大戦で行われたような国家間の総力戦だ。

それを受け昭和3年には、二度と悲惨な総力戦が起きないように「不戦条約」という国際条約が締結されていますが、それでも残念ながら第二次世界大戦は避けられず壮絶なる総力戦が展開されました。

意外と知られていませんが、我が国の憲法9条の条文は、第二次世界大戦を防げなかった「不戦条約」に基づいています。

さて、ヨーロッパではロシアがウクライナに侵攻する可能性が懸念されています。

現にウクライナのレズニコフ国防相は「情報当局は最悪を含む全てのシナリオを分析し、ロシアが1月末にも大規模な軍事的行動を起こす可能性がある」と公の場で演説しています。

既にロシアは、いつでも侵攻可能な約9万の兵力をロシア西部のウクライナ国境付近に展開しているらしい。

ただし、ロシア側は「あくまでもロシア領土内での軍事行動であり、ウクライナ侵攻など計画にない」と否定しています。

こうした情報戦もまたハイブリッド戦の形の一つです。

どうしても私たち日本国民には東欧情勢への関心が薄いため、なぜロシアがウクライナ侵攻を企てているのかの理解に乏しいかもしれません。

プーチン露大統領の言い分はこうです。

「西側諸国は旧ソ連諸国をNATOに加盟させ、その勢力を東方に拡大している。それは明らかにロシアの安全と主権への脅威である。このように西側がロシアの安全と主権を脅かす以上、我々にはそれなりの覚悟がある」

なるほどプーチン露大統領の立場になって考えてみれば、もしもウクライナがNATOに加盟し、そのウクライナ領に米軍基地ができようものなら、たしかにロシアの安全保障を大いに脅かすことになります。

たしかにロシアが米国に対して示した条約案にも…
●米国が旧ソ連諸国をNATOに加盟させないこと
●米露が国外に核や短・中距離ミサイルを配備しないこと
…とあり、ロシアはあくまでもNATOに対して「東欧や中央アジアなどで軍事活動をしないこと」を求めています。

もし西側が過激な行動を取り続け、レッドラインを超えるなら軍事的・技術的に適当な対応をとる、とプーチン露大統領は言っています。

こうしたなか事態を打開すべく、来年1月、スイスのジュネーブにおいて米露で協議がもたれることをロシア側が表明しています。

米国の政府高官は協議については調整中だとしつつ、「ロシアの提案で協議できる問題もあるが、決して同意できないものもある」と表明しています。

さて、どうなるか。

2022年もまた新年早々より、地政学的緊張が高まりそうです。