政府は来年度(2022年度)予算案の一般会計総額を107兆円台とする方向で調整に入っているらしい。
それを日本経済新聞が「10年連続で過去最大を更新…」と煽りつつ、「財政安定の展望を描けていない…」という悲観的な記事を書いてます。
日本経済新聞の言う「財政安定の展望」とは、むろんプライマリーバランス(以下、PB)の黒字化のことを意味しているにちがいない。
それとも歳出規模が拡大していること自体が気に入らないのか。
デフレ経済にある今、その規模は拡大しているというより、むしろまったく足りていないというのが実状なのですが…
それに、予算規模は拡大しますが新規国債発行額は2年ぶりに減らされる見通しです。
国債発行残高とは通貨発行残高を意味しますので、予算規模が過去最大とはいえ、やはりPBを重視した緊縮財政と言わざるを得ません。
ご承知のとおりPBとは、歳出(公債費を除く)と税収との差です。
新規国債発行額を減らせば減らすほどPBは黒字化していきます。
とはいえ、私の知る限り、PBの黒字化目標を設定してデフォルト(破綻)した国が二つあります。
一つはアルゼンチン、もう一つはギリシャです。
アルゼンチンは、1980年代、経済混乱に陥ってしまったため、これを立て直すために、1990年代初頭にIMF(国際通貨基金)等に救済を要請しました。
交渉の結果、アルゼンチンはめでたく大量の融資をを受けることになったのですが、このときIMFは救済措置の条件として2003年までにアルゼンチン政府のPBをゼロにすることを突きつけました。
アルゼンチン政府はIMF等から借りたカネを返済すべく、PBを黒字化させるために懸命に緊縮策をとりました。
緊縮策とは、むろん歳出カットと増税です。
その後、彼らは目標年次よりも2年ほど早い、2001年にPB黒字化を達成したものの景気が悪化してしまいました。
景気が悪化すれば税収が減ります。
税収が減るからさらに政府は緊縮を行う。
緊縮を行うから益々もって税収が減る、というスパイラルに陥り、アルゼンチン政府はもののみごとに破綻(デフォルト)してしまったわけです。
これとほぼ同じ経路をたどったのがギリシアです。
ギリシャは2008年のリーマンショックまでは、経済は順調に拡大していました。
ところが、2009年にはGDPが大きく下落し、PBが急速に悪化します。
その後、ギリシャ政府はIMF等に融資を依頼することとなり、その結果、融資を受けることができたのですが、やはりアルゼンチンと同様に増税と歳出カットによる徹底した緊縮財政を行うことを約束させられてしまいました。
ゆえに結局はアルゼンチンと同じ道をたどり、デフォルト(破綻)するに至りました。
こうした歴史の教訓を活かせず、PBの黒字化にこだわり続けている国が日本です。
我が国は自国通貨建てで国債を発行しているためにデフォルト(破綻)することは絶対にあり得ませんが、緊縮財政によるデフレの長期化で国民経済が貧困化し続けています。
PB黒字化目標を破棄(もしくは凍結)できない岸田政権では、デフレからの脱却は難しそうです。
国民の皆様におかれては、PBを黒字化することに何ら政策的な意味など無いことをぜひ知ってほしい。