全体的貧困化と階層間格差

全体的貧困化と階層間格差

経済成長(GDP成長)の源泉は労働人口の数ではなく、生産性の向上にあります。

これ以外にはありません。

そして国民一人あたりが一定期間にどれだけのGDP(所得=付加価値)を創出したか、これを「労働生産性」と呼びます。

一般的な計算式としては、実質GDPを就業者数で除したものです。

ILO(国際労働機関)統計をみると、G7(先進7ヶ国)のなかでも最も労働生産性が低い国は、残念ながら我が日本国です。

この20年間、OECD加盟国で唯一、経済成長していない国ですから当然といえば当然なのですが、とりわけデフレ経済の長期化によって一部の富裕層を除いて国民全体として貧しくなっています。

ちまたには「経済成長なんていらない…」などと言う人もおられますが、そういう人はたいてい食うに困らない裕福な家庭の人たちです。

おそらくは彼ら彼女らは経済が成長しないことの恐ろしさを知らないだけでしょう。

20年以上にわたるデフレ経済により日本が成長していないとはいえ、我が国には先人たちが築きあげたインフラや各種供給能力という資産があり、これらの存在によってなんとかまだ先進国ヅラできています。

今はただただ、その遺産を食い潰しているだけです。

ゆえに「経済成長なんていらない…」という戯言は、働くことなく親の遺産を食い潰している人が「財産なんていらねぇ…」と言っているようなものです。

私たち人間は共同体を形成して生存しています。

その共同体を維持・運営するためには各種のインフラが必要です。

例えば良質な水、安全な食料、安定的なエネルギーがなければ私たちは生活できないわけですが、これらを保障してくれているのがインフラです。

経済成長なしに、これらインフラをどうやって構築するのでしょうか。

あるいは平和を維持するための軍事力もまた究極のインフラですが、この20年のあいだ経済成長していないがゆえに今や中国に圧倒的な軍事力の差をつけられてしまい、私どもの国は安全保障上の脅威に晒されています。

経済成長不要論がいかに愚論かがわかります。

成長しないがゆえに全体として貧困化した一方、無責任な政治家どもが「構造改革」の名のもとに要らぬ改革を行ったがゆえに階層間の格差まで拡大しています。

例えば、派遣業法の改正等、雇用規制が緩和されたことで我が国の雇用に占める非正規雇用者の割合は高まりました。

私が学生のころには、非正規雇用者の割合は1割にも満たなかったのに今や37%を超えています。

正規と非正規の給与に差があることは上の表のとおりですが、といって正規雇用者の平均年収の521.5万円が高いわけでないことは言うまでもありません。

要するに格差が拡大しつつ、全体が貧困化しています。

まさに政策の大転換が求められるところですが、新自由主義から脱却できそうもない岸田内閣に期待するものは何もありません。