米国の対中戦略の失敗

米国の対中戦略の失敗

きのう、米国のサリバン大統領補佐官が「これまでの中国に対する政策は間違いだった」と、CNNのインタビューに答えました。

以前、当該ブログにてご紹介したとおり、サリバン氏は安全保障担当の大統領補佐官です。

その彼が「米国の政策によって中国に根本的な変革をもたらすという考え方は誤りだ」「バイデン政権が目指すのは、同盟国や友好国の利益のため、より好ましい国際環境を形成することだ」と主張しています。

遡ること10月6日、サリバン補佐官は中国の楊潔篪・共産党中央政治局委員とスイスで対面で会談しています。

この対面会談はバイデン米大統領と習近平中国国家主席が9月に行った電話会談を受けてのことでしたが、報道発表によれば、その会談内容は「両国の競争を責任あるかたちで管理するために、開かれたコミュニケーションを維持することの重要性が議論された」とのことです。

詳しくみてみますと、サリバン大統領は会談で「両国が利益を共有して協力できる分野と、米国として懸念している中国側の行動を指摘した」としていましたが、前者については具体的な分野は言及されていないものの、後者は明らかに「人権」「新疆ウイグル自治区」「香港」「南シナ海」「台湾」のことであることに疑いの余地はありません。

会談の2日前(10日4日)の段階で米国の通商代表部(USTR)は「(対中通商関係について)近く中国との対話を再開する」と発表していたのですが、サリバン氏が臨んだ10月6日の会談では通商問題については触れられていません。

ご承知のとおり、米中関係は台湾近辺での中国による行動を受けて緊張が高まっています。

ブリンケン国務長官もまた「米国は中国による台湾近辺での挑発的な軍事行動に強い懸念を抱いている」とし、北京に対して「台湾に向けた軍事的、外交的そして経済的圧力や強制をやめるよう強く求める」と発言しています。

こうした経緯があった上で、改めてサリバン補佐官は「これまでの中国に対する政策は間違いだった」と発言したわけです。

2000年以降、米国が採用した対中政策は「中国に経済的な利益を獲得させ、その恩恵に与らせれば米国及び世界にとって脅威になることはない」という戦略をとり、中国をWTOに加盟させました。

WTOへの加盟で自由貿易による果実を最大限に享受した中国は、驚くべきスピードで軍事費を拡大していき、いまや米国と対峙するに充分な力をもち、米国のみならず東アジア及び世界への脅威となっています。

サリバン補佐官が言うとおり、米国の対中政策は根本から間違っていたのです。

歴史をみれば、経済力を手にした国が軍事力を強化するのは必然であって、高度経済成長を得て経済力を手にしたにもかかわらず軍事力を強化してこなかった日本のような国は稀なのです。

さて、軍事・外交にひときわ疎い我が日本の政治家及び国民ですが、もはやそんなことでは済まされない時代に突入しています。

例えば、イギリス海軍の最新空母「クイーン・エリザベス」が9月4日に横須賀にある米国海軍横須賀基地に寄港し、ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」が11月5日に東京港(晴海の東京国際クルーズターミナル)に接岸しました。

むろん、どちらの入港も対中(あるいは対中露)戦略の一環としての軍事行動(平時の軍事行動)ですが、英独それぞれの軍艦はいかなる法的根拠をもって日本の領土に入港したのか、あるいはどうして英海軍は横須賀に入港し、一方のドイツ海軍は東京に入港したのか、これを説明できる日本の国会議員さんは果たして何人いるでしょうか。

因みに、英独海軍もともに表向きの理由として「対中戦略の一環として入港した」とは言っていません。

というか、言うわけがない。

では、同国の軍艦は何を名目にして入港しているのか。

あすのブログで解説させて頂きます。