新型コロナウイルス感染の発生以来、我が国では行政が抱える様々な問題が浮き彫りになりましたが、なかでも行政のデジタル化の遅れは致命的です。
ある意味、これ一つだけで日本を発展途上国化させるに充分なほどです。
例えば、接種記録システム「VRS」は、新型コロナワクチンの接種状況を把握するために開発した国のシステムです。
ところがこのVRS、正しい情報が登録されない事態が各地で発生しています。
とりわけ、接種日やワクチンの種類など基本的な情報での誤入力が目立っているらしい。
マイナンバーカードの交付率が未だ38.4%に留まっている我が国では、VRSへの入力は手入力です。
因みに接種台帳と住民基本台帳がシステム上で紐付けされていないのも問題です。
なお、意外に思われるかもしれませんが、日本では医療機関の3割程度がコンピュータ対応ができていません。
そうした医療機関は紙ベースで手書きした書類を役所に送付し、それをまた役所サイドが手打ちで入力しています。
手打ち、手打ち、手打ち…
お蕎麦ならいいのですが、行政上のデータをキーボードで手打ち入力する作業には、どうしてもヒューマンエラーのリスクが避けられない。
自慢にもなりませんが、日刊で投稿している私のブログもまた、キーボードの誤入力によっていつも誤字脱字だらけです。
現在、厚労省のワクチン分科会ではコロナワクチンのブースターショット(3回目接種)の時期についての協議が為されていますが、学術的には「8ヶ月以内には…」と言われていても、2回目接種の接種台帳への登録でさえいつ終わるかがわからないし、そのチェックだって必要です。
誤入力が各地で確認されている以上、慎重にチェックすべきでしょう。
現場を知らない政治家たちは、手打ち入力にどれだけたくさんの人員と労力がともなうかなど全くお構いなしです。
例えば、本来は来年5月に3回目接種をしなければならない市民に、なんらかの入力ミスで今年12月に接種券が届いてしまったとします。
自分が接種すべき時期を理解されている市民ならよいのですが、そうでない市民の場合ならどうでしょうか。
あるいは、今年4月に2回目接種を終えた高齢者は、来年1月には3回目を接種しなければなりません。
ということは、年内中(12月末まで)には接種券をその高齢者の手元に届けねばならないわけですが、それまでに接種業務主体である自治体による接種台帳への登録と確認は間に合うのでしょうか。
接種証明書の発行、3回目接種が迫る中、また手続きが滞る可能性があります。