市税収入は市内GDPに相関する

市税収入は市内GDPに相関する

国(中央政府)の税収がGDPに相関するように、地方自治体の税収もまた域内GDPに相関します。

上のグラフのとおり、川崎市においてもそのことは顕著であり、市内GDPと市税収入の相関係数は「0.73」という強い相関を示しています。

川崎市は東京と横浜という大消費地に挟まれ、首都圏の一角をなすという地理的好条件に恵まれているため、過疎化のすすむ地方都市に比べればまだマシなものの、それでもデフレ経済の長期化により市内GDPが伸び悩んでいることから市税収入もまた伸び悩んでいます。

国とは異なり、地方自治体には通貨発行権がありません。

加えて地方財政法、地方財政健全化法等々の財政制約にしばられている地方自治体にとって、税収は主要な財源です。

ゆえに、PB(基礎的財政収支)黒字化目標を破棄することなく、財政収支の縮小均衡にこだわりつづけてデフレ経済を放置している国家政策に怒りを覚えるところですが、川崎市の場合「市内GDPの低迷は国のせいだ」とも言い切れません。

GDP成長(経済成長)の源泉は、生産性の向上にあります。

そして生産性を向上させるためには、4つの投資が必要になります。

1.公的なインフラ投資
2.民間設備投資
3.技術開発投資
4.人材投資

とりわけ、革新市政が続いた30年間、川崎市の都市計画はゼロだったと言ってよく、公的なインフラ投資は実に乏しいものでした。

本市における代表的な貧弱インフラが道路です。

なぜなら川崎市には国が整備する国道以外に片側2車線以上で市域を貫くまともな道路がない。

都市計画道路の整備率も未だ7割を切っており、私の住む多摩区に至っては整備率が53%であることから、半分ちかくは計画があるだけで道路がない状況です。

そのうえ南武線や小田急線という鉄道網も未だに地上を走り(一部は高架化)、そこらじゅうにある「開かずの踏切」が交通流の円滑化を阻害し経済活動の妨げになっています。

朝夕の混雑時、橋上駅舎化されていない駅に隣接した踏切では「命がけ」の通勤通学が強いられています。

また、貧弱な道路網が路線バスの回遊性を妨げていることから、市民の交通手段としての利便性とバス事業社の採算性を損なっています。

因みに、そんな川崎市とは対象的に、お隣の横浜市には片側4車線以上の市道があるほどです。

あるいは横浜港からは内陸にむかって無数の道路網が放射状に伸びています。

港湾としての歴史的使命のちがいがあったとはいえ、岸壁の深さ等々、川崎港と横浜港のインフラ差は歴然です。

残念ながら、川崎市のようなインフラ貧弱地帯では生産性の向上は起きにくい。

ゆえに私は市議会においてひたすらインフラ整備の重要性を説いています。

なお川崎市もまたやがては人口減少に転じますが、人口減少するからこそインフラ投資による生産性向上が必要です。

行政がインフラを整備すると、フロー効果としてもストック効果としても市内GDPを拡大します。

即ち、潤沢な税収を確保したいのであれば、何よりも行政はインフラ力を高め市内GDPを引き上げることです。

むろん、市内GDPと市税収入の増加は、市民所得を増加させ市民生活の利便性を高めていることを意味します。

地方自治体にとっての「賢い支出」とは、市民一人あたりの市内GDPを向上させる支出を言うのだと私は考えます。