通常、物価というものは需要が供給を上回ると上昇し、下回ると低下します。
ゆえに物価上昇は経済活動の活発化を意味する一方で、物価の下落は経済活動の停滞を意味します。
ただし、物価と失業率が同時に上昇していくインフレ的な不況(Stagflation)もあります。
1970年代の日本がそうであったように。
なお、発展途上国のように供給能力の極端な不足から生じる物価上昇は悪性インフレとなります。
物価の動向は一国の経済活動をみるうえで極めて重要な指標です。
とりわけ、物価統計の一つである消費者物価指数は“経済の体温計”などと言われています。
例えば消費者物価指数は『家計調査』や『GDP統計』における家計消費支出など、他の経済指標を実質化するためのデフレーターとしても利用されています。
また、国民年金や厚生年金においては物価の変動に応じて給付水準を見直すことが法律によって決められていますが、ここでいう「物価の変動」を示す指標として消費者物価指数が使われています。
さらに消費者物価指数は、日銀が行う金融政策の判断材料としても使用されているほか、公共料金改定の際の参考にもされており幅広く利用されています。
消費者物価指数には「生鮮食品を除いた物価」「生鮮食品とエネルギーを除いた物価」「酒類を除く食品と、エネルギーの両方を除いた物価」などがあり、細かな系列ごとに総務省が調べています。
さて、日銀が2%の物価目標を目指して量的緩和など低金利政策をつづけているのは周知のとおりです。
しかし、なぜか日銀はその物価目標を「生鮮食品を除く総合消費者物価指数」(コアCPI)でみています。
コアCPIには、エネルギー価格(ガソリン、灯油、プロパンガス、都市ガス、電気代等)が含まれています。
我が国は資源輸入国ですので、資源価格が高騰すると国内の景気状況に関係なく物価(コアCPI)が上昇してしまいます。
よって、本来は「生鮮食品とエネルギーを除く総合消費者物価指数」(コアコアCPI)でみるべきです。
冒頭のグラフをご覧のとおり、コアコアCPIは6ヶ月連続でマイナス(前年同月比)という悲惨な数字です。
コアCPIがゼロ%になったのはエネルギー価格が上昇しているからであって、景気が上向いたからではありません。
景気の状況を正確に把握するためには「コアコアCPI」でみるべきなのはそのためです。
例えば何かの要因で原油価格が高騰すれば、自然、エネルギー価格を含むコアCPIは上昇します。
それをもって「日銀の物価目標が達成されたぁ」と言ったところでなんとも虚しいものです。
なお、8月の消費者物価指数が発表された際、NHKは次のように報道していました。
「家庭で消費するモノやサービスの値動きを見る8月の消費者物価指数は生鮮食品をのぞいた指数が去年の同じ月と比べて横ばいでした。7月まで12か月連続で前年を下回っていましたが、下落に歯止めがかかりました。(後略)」
要するに、コアCPIで歯止めがかかったから景気の悪化にも歯止めがかかった、と言いたげなニュアンスです。
ですが、前述のとおりコアコアCPIは半年間マイナスが続いています。
日銀が指標にしているから仕方がないことかもしれませんが、報道するならコアコアCPIを報じるべきだと思います。
経済政策としては、コアコアCPIが一定期間3〜5%上昇し続けるまで政府が財政支出を拡大することが望ましい。