未だ世の中には「日本の公務員は多すぎる…」という誤解が跋扈しています。
日本維新の会という政党があるらしいのですが、例えば同党のホームページを見てみますと、「行政は無駄を省く…」というタイトルで、その政策の第一に「公務員の削減」が謳われています。
この政党の政策を見ていくと、どうやらこの党の基本理念は「誰かを叩けば、他の誰かが必ず浮かばれる」というものらしい。
こうした「誰かを叩けば、他の誰かが浮かばれる」的な発想を演繹していくことで、「中央政府を小さくすれば、地方自治が充実する…」「規制を撤廃すれば、新しい産業が生まれる…」「公務員を叩けば、民間が豊かになる…」という理屈を彼らは捏ね上げているようです。
むろん、そんなことはまったくあり得ない話です。
例えば、中央政府を小さくしても、その分、地方自治体の仕事が増えることになりますので、現在の人員(地方公務員数)では足りなくなります。
ゆえに結局、公務員数は減りません。
というより「我が国の公務員数は多すぎる…」というのは、そもそもの誤解です。
冒頭のグラフのとおり、国際的に比較しても日本の公務員数(外郭団体への天下りも含む)は少ないほうで、あのサッチャー改革で大幅に公務員を削減したイギリスよりも少ない。
それに、公務員を減らし過ぎると危機が発生した際に充分な行政対応ができないことは、今回のコロナ・パンデミックでも、毎年のように国土と国民を襲う自然災害を通じてよく理解されているはずです。
保健所及びその人員が不足しているために、どれだけの人がコロナで重症化し、どれだけの人が命を落とされたのか。
都道府県の職員が不足しているために、時短協力金の振り込みがどれだけ遅れたことか。
小さな政府化(防災インフラの脆弱化)により、どれだけの国民が生命と財産を奪われたのか。
要するに、公務員を減らして困っているのは民間なのです。
あるいは日本維新の会は「道州制への移行のための改革を推進するため、統治機構抜本改革基本法を制定する」と言っていますが、道州制なんて我が日本国には要らない。
例えば、大阪を中心に関西圏を一つの州にすると、それだけで2500万人規模の行政単位となり、ほぼ一国の規模です。
あるいは、九州地方を一つの州にすれば、それだけでオランダ一国と同じ規模の行政単位です。
そんなドデカイ地方行政を新たにつくって、いったいどのようにして充実した自治を実現するのでしょうか。
しかもそれを、中央政府のもつ重要な機能を各州に分散することで実現しようというわけですからほとんど正気の沙汰とは思えません。
中央政府の弱体化は、まちがいなく国力を毀損します。
不確実性から逃れることのできない現実政治では、どうしてもオールジャパンで対応しなければならないことがたくさんあるからです。
また、「規制を緩和すると新しい産業が生まれる」と言うけれど、結局は新規参入者が「既存の所得」を奪うだけに終わっているのが実情です。
新自由主義的構造改革に基づく「規制緩和」によって新たな所得(付加価値)が生まれているケースなどほとんどありません。