新型コロナウイルスに感染後、自宅などで体調を悪化させ死亡するケースが増えています。
厚労省によれば、9月8日の時点で、入院できず自宅療養を強いられている人たちは全国で10万3328人いるという。
そうした中で死亡されてしまった人たちが先月(8月)だけで250人(前月比で約8倍)もおられます。
警察庁の調べによると、そのうち54%が50歳代までというから若くとも決して油断はできません。
現在、自宅療養者については保健所が健康観察を行い、症状に変化があった場合には医師に報告し、その医師が自宅療養者の健康観察をする、という流れになっています。
ここにきて、あまりにも自宅療養者が増えてしまったために、既に保健所が対応しきれていない状況です。
例えば、そんな状況に耐えかねた静岡市は、市と医師会が協力し一部の自宅療養者については保健所を介すことなく医師が直接電話で健康観察する仕組みをつくっています。
我が川崎市においても保健所の逼迫は同様です。
一方、本市医療圏では、重症者を受け入れる救急救命センターを開設する意志を既に明確にし、医療危機等の必要な診療設備も整備している医療機関があるにもかかわらず、許可権者である神奈川県の許可がおりずに未だ救急救命センターを増設できていない案件が発生しています。
せっかく「重症患者を受け入れます」と言ってくれている医療機関があるにもかかわらず、なぜ許可権者である神奈川県の許可は降りないのでしょうか。
それは、本来自ら決断すべき神奈川県の当局(最終的には神奈川県知事)が決断を下さず、権限の曖昧な会議体にその結論を求め逃げ回っているからです。
その会議体とは『地域医療構想調整会議』です。
当該会議は別の目的で国が全都道府県に設置したものですが、なぜか神奈川県は当該会議に例えば救急救命を許可するかしないか等の裁定を委ねています。
しかしながら当該会議体は「当該医療圏において、超高齢社会の適正な病床配置をどのようにすすめるのか」を議論する場であって、パンデミックなどの危機時にどう対応するのかを議論する場ではありません。
識者によると「当該会議は地域医療の関係者で構成されているため、こうした問題を議論するには無理がある」らしい。
国からも「こうした会議で決定するのは無理がある」と指摘されているようです。
私に言わせれば、要するに神奈川県知事の仕事放棄です。
神奈川県知事が「重症者も受け入れ可能な救急救命センターが必要だ」と思うなら、許可権者である県知事として許可すればいいだけの話です。
因みに、昨日のNHKニュースを観ていたら、この件について『規制改革推進会議』の医療・介護ワーキング・グルーブ座長が出てきて「平時の行政と非常時の行政は違うから国や自治体のリーダーシップで決断するべきだ」などと偉そうな発言をしていまいした。
言っていることはその通りだが、そもそも規制改革推進会議に「有事(非常時)」を語る資格があるのか!
規制改革推進会議といえば、『経済財政諮問会議』と両輪となってネオリベラリズム(新自由主義)に基づく構造改革(自由化、民営化、規制緩和、PB黒字化堅持、自由貿易)を進めてきた内閣の諮問会議です。
古くはオリックスの宮内義彦氏、最近では政策研究大学院大学の大田弘子氏などが幅をきかして、彼ら彼女らは要らぬ改革をやってきました。
なにせ構造改革ほど有事を無視した改革はありません。
ご存知のとおり、ネオリベラリズムとは「自由競争市場こそが資源配分を最大限に効率化させる」という教義(ドグマ)です。
自由競争市場に委ねてしまったら、不確実な危機に対応などできるわけないであろうに…
今回のコロナ危機にあって保健所が逼迫しているのも、構造改革路線(PB黒字化)で全国の保健所の数を減らしてきたことの結果です。
規制改革推進会議は構造改革の反省をしてからものを言うべきではないか。