異物混入騒ぎと報道の歪み

異物混入騒ぎと報道の歪み

何日か前に「米モデルナ製のコロナワクチンに異物が混入していた」というニュースがありました。

異物というのはステンレス片でしたが、そもそもモデルナは自前の生産工場を持っておらず、当該ワクチンはスペインに在する工場への外注生産だったらしい。

その工場の管理ミスによってワクチンにステンレス片が混入してしまったことを既にモデルナも認めています。

ただし、日本ワクチン学会は、混入したステンレスが仮に筋肉へ注入されても「全身的な症状を起こす可能性は低い」との見解を示しています。

注射した部位が炎症を起こし腫れる恐れはあるようですが、急性アレルギー反応等のアナフィラキシーが起きる可能性は低いとのことで、死亡などの重大な健康被害にはつながりにくいとのことでした。

まさに、不幸中の幸いです。

さて、問題はその直後のことです。

「モデルナ製ワクチンに異物混入」というニュースが流れてまもなく、今度は「ファイザー製のワクチンにも異物が混入していた…」というテレビニュースがありました。

まるでモデルナ製ワクチンにステンレス片が入っていたのと同様の事例のように報道されていたので一瞬ビックリしましたが、そのような事実はありませんでした。

報道したが側にそのつもりが無かったとしても、報道を見た側の私はそのように解釈しましたので、あれは「誤報」だったと思います。

その後、よく調べたところ、いわゆる「コアリング」と言われるものが確認されたらしい。

注射針の先端は横から見ると斜めになっていて、ワクチンを注射器に注入する際、バイアルのゴム栓に対して注射針を斜めに刺してしまうと、針のアゴ部でゴム栓が削り取られてしまうことがあります。

これを「コアリング」と言うらしいのですが、要するに「ワクチンを打つ(注入する)人によるミス」です。

つまりコアリングは打ち手のミスですから、どのワクチンでも起こりえます。

翻ってモデルナの場合は、生産過程での明らかな不手際で金属片が入ってしまったのですから、コアリングとは本質的に異なります。

にもかかわらず、モデルナのニュースの直後に「ファイザーでも…」と、テレビニュースが派手に煽ったものだから、今なお「ファイザー製ワクチンにもモデルナ製ワクチン同様の異物が混入していた」と誤解されておられる人は多い。

くリ返しますが、そのような事実はありません。

この誤報に、実は肝心要の厚労省も踊ってしまったフシがあります。

その証拠に厚労省は、9月2日と9月3日付で自治体むけに「異物混入の件」について注意喚起とも、あるいは「言い訳」とも、あるいは「お詫び」とも読み取ることのできない意味不明な文書を通達しています。

よく読んでみると、詰まるところ「いくつかのバイアルでコアリングが確認されたが、製品の品質には影響しないことを確認済だ」と言っています。

要するに「いったんは異物混入の警鐘を鳴らしてしまいましたが、何ら問題はありませんでした」ということです。

そそっかしいにも程があります。

報道もしかり、厚労省もしかりです。

もう一つ、テレビニュースにはワクチンについての歪んだ報道があります。

彼らは、ワクチンのブレイクスルー感染を事さらに強調して「接種済みの感染者は、今日は何人でした」と嬉しそうに報道していますが、例によって絶対数(分子)だけを示して肝心な分母は示さない。

冒頭の表のように、接種者の新規陽性率は未接種者のそれよりも遥かに少ない。

何度でも言います。

割り算を理解できない人は、政治行政はもちろん報道にも携わってはいけない。