私たち日本国民や家計が銀行に口座を持っているように、銀行もまた日本銀行(中央銀行)に口座をもっています。
中央銀行とは銀行のための銀行であり、同時に政府のための銀行でもあるわけですが、民間銀行は日銀に持つこの口座に一定の預金を蓄えています。
ただ、蓄えていると言っても「現金」を溜め込んでいるわけではなく「デジタルデータ」を積み上げているだけですが、これがいわゆる日銀当座預金です。
民間銀行は企業や個人に融資をするのが主たる業務ですが、融資をすればするほど預金量は増えていくために、日銀は民間銀行に対して預金量の一定割合(準備利率)の日銀当座預金を保有することを義務付けています。
さて、その日銀当座預金ですが、2013年以来、残高が増え続けているのをご存知でしょうか。
2012年末に43兆円だった日銀当座預金残高は、今年の8月31日時点で535兆円を越えています。
2013年の春以降、黒田バズーカと呼ばれる大規模な量的緩和政策が継続されてきたことによって、日銀は民間銀行のもつ国債を買い上げており、結果として日銀当座預金残高が積み上がっています。
どうして日銀が民間銀行のもつ国債を買っているのかというと、政府が国債(新発10年債)を発行する際の金利を下げるためです。
政府が発行する新発10年債は、長期金利の基準指標となります。
ゆえに長期金利の指標となる国債金利を下げることで、企業や個人が長期資金を借り易くしているわけです。
ところが、ご承知のとおり思うように貸出しは増えていません。
貸出しが増えていくと金利が上昇していくはずですが、国債金利は未だゼロ%台で推移しています。
なぜでしょう?
むろん、デフレ(総需要不足経済)により資金需要が乏しいからです。
どんなに金利を引き下げたところで、デフレを払拭しないかぎり資金需要が高まることはあり得ません。
因みに、「余りに余った日銀当座預金は、どうしたら世の中に放出されるのでしょうか?」というご質問を頂くことがありますが、日銀当座預金が世に放出されることはありません。
前述のとおり、私たち日本国民、あるいは家計や企業は日銀に口座をもっておりませんし、銀行にとって日銀当座預金は財やサービスを買うことのできるおカネでもありません。
残念ながら、日銀当座預金残高を積み上げる量的緩和政策は、デフレには何の効果も発揮しないのでございます。
ただし、唯一、日銀当座預金を借りて使うことのできる経済主体があります。
それは、政府です。
例えば政府が国債を発行すると、日銀当座預金から政府が日銀にもつ口座におカネが移動します。
政府はそれを使って様々な事業(需要創造)を行うことができます。
需要不足が払拭されるまで支出を拡大し続ければデフレは自ずと解消され、日本経済は成長軌道に乗ることができます。
則ち、日銀当座預金で需要をつくることができるのは政府だけなのです。