2019年にMMT(現代貨幣理論)が話題になって以来、今の日本政府に深刻な財政問題など存在しないという事実が少しずつ世に知れ渡ってきたものの、未だ「政府財政は厳しい」と誤解されている人たちは多い。
先日も「コロナ対策で政府支出が増えた分、やがて増税しないと国が潰れちゃう」などと、相変わらず無責任なことを言う人がいました。
まず「国が潰れちゃう」って、なんですか?
この種の人たちの特徴は、必ず抽象用語だけでモノを言うことです。
国が潰れると言うなら、何を以って国が潰れたことになるのかをちゃんと具体的に定義してから言ってほしい。
加えて、税収こそが財源だ、という思い込みも甚だしい。
結局、家計簿感覚でしか行財政をみることができないから、このような発想に陥ってしまうのでしょう。
支出が増えた分、どこかで収入(財源は税金)を増やして帳尻を合わせなければ…と。
何度でも言います。
国会財政は家計簿ではありません。
家計簿は「経済」の一部であることは事実ですが、その「経済」には鉄則(原則)とも言うべき次の恒等式があります。
政府収支 + 民間収支(企業・家計の収支) + 海外収支(経常収支) = 0
これは揺るぎない物理的事実です。
則ち、経常収支が黒字である我が国では、政府収支が赤字にならないかぎり民間収支が黒字になることはありえません。
政府が黒字化(赤字の縮小も含む)するということは、民間(企業や家計)の収支が赤字化するということです。
この20年間、なかなか国民の所得が向上しないのは政府が黒字化しようとしているからです。
といって、日本政府の赤字を心配する必要はありません。
なぜなら我が国は、主権通貨国だからです。
主権通貨国という言葉は、一般的に聞き慣れない言葉かと思います。
主権通貨国とは…
①自国通貨建てで国債を発行できる国
②変動為替相場制を採用している国
③変動為替相場制を採用できるほどに国内生産力を有している国
…以上①②③を兼ね備えた国のことです。
事実が証明しているように、これまで主権通貨国が財政破綻(デフォルト)した事例は一つもありません。
というより、何らかの政治的理由により自らデフォルトしないがきり物理的にあり得ません。
考えてみれば当然のことで、そもそも日本円を発行できる日本政府がその元利金(日本円)の支払いに滞りが生じることなどありえないのでございます。
例えば、デフォルト国として有名なギリシャは統一通貨ユーロを採用する共通通貨国であり①の条件を満たしていません。
あるいは、昨年にデフォルトしたシリアは②の条件を満たしていません。
要するに、ギリシャもシリアも、いずれも主権通貨国ではないのに対し、我が日本国は、①日本円で国債を発行でき、②変動為替相場制を採用し、③デフレになるほどの供給能力を有した「主権通貨国」です。
ゆえに破綻(デフォルト)などあり得ない。
「そうは言っても、さすがに1,000兆円を超える日本政府の国債発行残高は問題ではないのか?」という疑問をお持ちの方々も多いことでしょう。
これもまた家計簿の発想です。
家計にとってローンを組むことは借金そのものでしょう。
しかしながら、政府にとって国債を発行するということは、たんに「通貨」を発行しているにすぎない。
経済規模の拡大とともに世の中に流通する通貨量を増やさねばならないことから、政府の通貨発行残高(=国債発行残高)が増えるのは当然のことなのです。
よく「今は未だ民間の貯蓄があるから大丈夫だけど、やがて民間貯蓄が尽きたら政府は国債を発行できなくなる」と言う人がおられますが、これも嘘です。
政府による国債発行は民間貯蓄を原資にしていません。
銀行が発行する預金通貨と同様に、政府は無から通貨(国債)を発行しています。
これを「万年筆マネー」あるいは「キーストロークマネー」と言います。
そうすると今度は「じゃぁ、政府は無限に借金できるのかぁ〜」とムキになって反論してくる人がおられますが、むろん、政府の通貨(国債)発行量にはインフレ率という唯一の制約があります。
ついでながら、現在の日本のインフレ率はゼロ%(デフレ状態)です。
ただし、一般国民が家計簿の発想で国家財政を考えているのならまだいいのですが、国家財政に携わる国家官僚(財務官僚)や政治家たちの多くが家計簿で国家財政を考えていることが大問題です。
彼ら彼女らは「コロナ対策でプライマリーバランス(基礎的財政収支)が赤字化した分、増税によって収支を均衡させなければ」と考えているのは事実です。
実に厄介な問題です。
デフレを脱却しないかぎり増税などあり得ない。