公立学校からプールが消えていく

公立学校からプールが消えていく

今日で子供たちの夏休みが終わります。

夏休みといえば、子供のころ通っていた小学校のプールを思い出します。

あの頃は学校の授業だけではなく、夏休みにも学校プールが開放されていて、決められた日に通わされていた記憶があります。

等級ごとに色の異なる細長い級印が、級が上がることに水泳キャップの横に貼り付けられていくのが嬉しかった。

さて、いま我が国では、こうした公立学校のプール施設が全国的に消えつつあるのをご存知でしょうか。

学校プールの耐用年数は30年とされています。

例えば川崎市には耐用年数を超過した学校プールが94施設あり、むろん老朽化が進んでいて速やかに更新しなければならないわけですが、例によって予算の都合で更新していません。

更新するには、1校あたり約3〜5億円に費用を要します。

仮に1校あたり4億円として、94校のプールを更新すると376億円になります。

一部は国(文科省)によって補助されますが、大部分は川崎市が市債(地方債)を発行しなければなりません。

どこの自治体でも、地方債を発行した際の後年度負担を嫌がるわけです。

それに、例え更新しても、引き続き水道料金、清掃費、ろ過器のメンテナンスなどの運営費や維持管理費を負担しなければならないことから地方自治体は老朽化プールの更新に躊躇しているわけです。

老朽化した学校プールを更新しない理由は他にもあるようで、例えば近年は台風やゲリラ豪雨等により授業を実施できないことが増えていること、あるいはプール運営にあたり教員への職務負担が大きいことなどがあります。

そこで対応策として各自治体は老朽プールを更新せず、ちかくの市民プールや民間プール施設を活用して水泳の授業を行おうとしています。

要するに、水泳の授業時間になると、とことこ歩いて、あるいはマイクロバス等により、最寄りの市民プールもしくは民間プールに子供たちを移動させ、そこで水泳の授業を行っています。

例えば海老名市、魚津市、美濃加茂市などは市民プールを活用し、名古屋市、北本市、太宰府市、高浜市などは民間プールを活用しています。

因みに、水泳を教えるのは学校の先生でなく、教員免許をもたないインスタラクターです。

いまでは教員試験に水泳は入っていません。

以上のような理由から、川崎市もまた老朽化した学校プールを更新することなく、ちかくの市民プールや民間プールを活用していく方向に舵をきりました。

川崎市の教育委員会は「近隣に市民プールも民間プールもない場合には、老朽プールを更新する可能性もある」としていますが、おそらくは更新されることはないでしょう。

結局は「近隣になくとも隣町にはあるのだから、多少遠くともそこに行けばいい」となりそうです。

地方自治体の縮小均衡財政主義もまた、国のPB黒字化目標に負けず凄まじいものがあります。

街の小学校からプールが消えていくのは、実に寂しい。

為政者たちが正しい貨幣観をもたぬがゆえの結果です。