アフガニスタンでは米軍が8月末までに完全撤退することから、アフガニスタン政府が支配してきた地域が次々とタリバンの手に落ちています。
タリバンは9日にも北部サマンガン州の州都アイバクを「支配下に置いた」と宣言し、これでタリバンは全34州中6カ所の州都を制圧したこととなり、タリバンの支配地域は2001年の政権崩壊以降最大となりました。
地元メディアによると、政府軍は劣勢を立て直せない状況らしい。
それでもアフガニスタン政府のハムドゥラ・モハブ国家安全保障顧問は、「人口の大半は政府がコントロールする地域に住んでいる」と強気な姿勢を示していますが、タリバンが占領しているのは農村地域だけでなく、国境の要衝7ヶ所を既に制圧しています。
つまりタリバンは今や政府よりも多くの国境検問所を抑えていることになります。
供給網をタリバンに締め上げられているため「アフガニスタンのガニ政権は長続きしないだろう…」と言われています。
なるほどアフガニスタンは内陸国です。
供給ルートの確保は不可欠です。
北部や東部への主要供給ルートは残っているものの、例えば南部スピン・ボルダークのウェシュ国境検問所は既にタリバンの手に落ちています。
政府軍は戦略拠点の奪還のために治安部隊を集約しているようですが、米軍の支援が望めなくなった今、支配地域をタリバンから奪還するのは困難かもしれません。
興味深いことに、中国は「できれば米軍に撤退しないで欲しい…」と思っているようです。
中国からすると、米軍がアフガニスタンから撤退することで中央アジアでのプレゼンスが減るので喜ばしいことではないかと思うのですが、そうではないらしい。
とりわけ中国にとっては「米軍が撤退することで、アフガニスタンに隣接するウイグル自治区が不安定化するのではないか…」という懸念があるようです。
則ち、アフガニスタン北部がタリバンなど反政府組織、あるいはゲリラやテロ組織の温床地帯になってしまうと、そこから新疆ウイグル自治区に対して何らかの工作が行われてしまう危険性を危惧しているとのこと。
因みにロシアは中央アジアの国々に米軍が駐留することには否定的です。
自分たちに近いところに米軍が来るのは困ると…
中国は「米国はもっとアフガニスタンに投資をすべきだ」とまで言っています。
そう考えると、米国がアフガニスタンに介入し駐留していたことによって、最も恩恵を受けていたのは中国だったのかもしれません。
そんな中国に「タダ乗りさせない…」という判断が米軍完全撤退の背景の一つにあったのかもしれません。
今後、米軍が完全撤退しアフガニスタンが不安定化することによって、中国やロシアに地政学上どのような影響を与えるのか。
ロシアは過去(1979年)、アフガニスタンに侵攻したものの撤退した痛みを持っており、そのことが結果的にソ連を崩壊させたとも言われています。
この先、期日はどうであれ米軍撤退の方針は変わらないでしょう。
米国としては、アフガン撤退が「テロとの戦い」の終結という位置付けなのでしょうが、はたしてどうなるか。