時事通信社は7月16日付で、地方交付税交付金に関して次のようなニュース記事を配信しています。
『交付税なし自治体、22減 コロナで税収減
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3009e29c475aa391aef754e8dc6516b407ea966
全国の地方自治体のうち、税収が豊かなため国から地方交付税を受け取らずに財政運営ができる「不交付団体」の数が2021年度は前年度より22減少し54団体となることが16日、分かった。(後略)』
記事を読むかぎり、どうやら地方交付税交付金について誤った認識があるようです。
この書き方では、記事の読み手に対して「地方交付税交付金は自治体の生活保護費だ」みたいな印象を与えてしまいます。
ゆえにぜひとも地方交付税交付金について正しい理解をもってほしい。
そもそも全国の都道府県及び区市町村において自主財源のみで行政運営を行える自治体など東京都を除いてありません。
川崎市はもちろんのこと、政令市で最も税収規模の大きい横浜市だって自主財源だけで行政を運営することは不可能です。
国庫補助金や地方譲与税、それこそ地方交付税交付金等があるからこそ、ようやく地方行政は成り立っています。
そして各自治体間の財政調整を行うために設けられている制度こそが「地方交付税交付金」という制度です。
例えば、今年度(令和3年度)の地方財政計画では、17兆4,385億円という地方交付税の総額が計上されています。
この予算は、全国すべての自治体の基本的な行政経費の一部として確保されている財源であって、けっして貧しい自治体のために確保されている財源などではありません。
これを理解できないメディアや首長や議員らが「交付金をもらうことは恥ずかしいこと…」「交付金をもらっていないことが格好いい…」などと勝手に思い込んでいます。
川崎市民の中にも、川崎市が不交付団体であることを「実に立派だ」と誤解している人たちは少なくありません。
実に残念です。
まず、前述の約17.5兆円がどのようにして全国の自治体に割り振られるのかを知ってほしい。
地方交付税交付金は、各種行政経費ごとに個別算定経費(例えば、道路面積✗単位費用)と補正係数が定められ、自治体ごとの金額(基準財政需要学額)が決められていきます。
例えば、道路インフラを着実に整備してきた自治体ほどに、その部分においては個別算定経費は高くなり、逆に着実に整備してこなかった自治体ほどに個別算定経費は安くなります。
こうした個別算定経費の積み上げが「基準財政需要額」となり、この基準財政需要額から税収を差し引いた金額が「地方交付税交付金」となります。
なので、基準財政需要額が大きい自治体ほど住民のために行政としての仕事をしてきたことになりますし、交付団体にもなりやすいわけです。
要するに、これまで我が川崎市が地方交付税交付金の不交付団体であったのは、あまりにも財政規律を重視しすぎてインフラ整備を抑制してきた結果であるとも言えます。
ただ、現在の地方交付税交付金制度が川崎市のような細長い地形の自治体には不利になっている点も否めません。
上のグラフのとおり、川崎市の市域面積は全国の政令指定都市のなかで最も狭く、下のグラフのとおり川崎市の市域の南北距離もまた政令指定都市のなかで最も狭い。
このことにより、川崎市は政令指定都市のなかで最も人口密度が高い自治体という評価がなされ、それが算定基準の一つである補正係数でマイナスに影響してしまうことで、どうしても川崎市は「不交付団体になりやすい」という制度上の事情があります。
この点については本市財政当局が総務省に改善を求めているところです。
とはいえ、国(財務省)が地方交付税交付金の総額を潤沢に増やしてくれれば、このような問題はすぐにでも解消される話です。
例によって諸悪の根源は、財務省が主導する緊縮財政(PB黒字化目標の堅持)なのでございます。