きのうIMF(国際通貨基金)が、最新の世界経済見通しをプレスリリースしました。
2021年の世界成長率予測は6.0%に据え置かれつつも、成長拡大が期待される国と鈍化が懸念される国とに二極化するとの見通しが示されました。
とりわけ、新型コロナワクチンの普及状況が先進国と発展途上国の経済回復の格差を広げるとしています。
この格差を、IMFは「断層」と表現しています。
即ち、「ワクチンへのアクセスが世界経済の回復を二分する主要な断層線だ」と言っています。
要するに、一方にワクチン接種の普及によって本年後半に経済活動のさらなる正常化が期待される国々があり、他方に引き続き感染の再拡大や新型コロナによる死者数の増加に直面することになる国々があり、その境目が「断層だ」と言うわけです。
むろん、前者のほぼすべての国が先進国です。
残念ながら、その先進国の中には我が日本国は入っておりません。
IMFの見通しによれば、世界経済は2021年に6.0%、2022年には4.9%の成長を遂げると予測しています。
世界全体の2021年の成長率予測は2021年4月での見通しとほとんど変わっていませんが、拡大する国々と鈍化する国々とが相互に相殺し合う修正がなされています。
新興市場国や発展途上国についてはアジアの新興市場国を中心に2021年の見通しが下方修正されており、対照的に先進国の見通しは上方修正されるという具合です。
IMFのチーフエコノミストであるギータ・ゴピナート氏は「ワクチン接種を完了した人が、先進国では人口の40%近くであるのに対し、新興国は11%、低所得途上国では一握りにとどまる」と指摘しており、なお「予想より速いワクチン接種ペースと正常化が予想の引き上げにつながり、ワクチン確保が困難で感染が再拡大しているインドなど一部の国については予想を引き下げた」と説明しています。
例えば、米国の成長率は、2021年が7.0%、2022年を4.9%と予想され、バイデン大統領が目指す約4兆ドル規模のインフラ・教育・家族支援計画が議会を通過すると想定したうえでの数値のようです。
一方、インドの今年の成長率予想は3%ポイント引き下げられ9.5%となり、中国については公共投資や財政支援の減速を理由に予想は0.3ポイント引き下げられ8.1%とされています。
ASEAN5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)は、新型コロナの感染者が拡大していることから予想が引き下げられています。
特に低所得国はワクチン配布が遅れるであろうとしています。
このようにワクチン充実国とワクチン不足国との断層が明確になっています。
とはいえ、感染力の強い新たな変異株の出現により、例え先進国であっても再び行動が規制され経済活動が低迷するリスクについては否定できないことをIMFは理解しています。
その上でIMFは「ワクチン接種を受けようとしない人が多ければ新興国、先進国両方に影響を及ぼし、その場合は今年および2022年の世界成長率予想をそれぞれ0.8%ポイント押し下げる可能性がある」としています。
恥ずかしいことに、G7で唯一下方修正されたのは日本だけです。