戦後、我が国が初めて国債を発行したのは、昭和40(1965)年度の補正予算のときです。
その前年に東京五輪が終わって、いわゆる五輪需要が急速に縮小して景気が悪化しました。
ゆえに政府は国債を発行して需要を創造する必要があったわけです。
そのときの蔵相(現在の財務大臣)は、のちに首相となる福田赳夫さんでした。
福田赳夫さんが蔵相に就任されたのはその年の6月のことですが、既に就任の記者会見で「いずれ公債発行に踏み切らなければならない」と発言されています。
踏み切らねばならない…
まるで「悪に手を染めねばならない…」とでも言いたげな語調ですね。
とにもかくにも借金は悪だ、といういわゆる家計簿的財政思想です。
これだけインターネットやSNS等を通じてMMT(現代貨幣理論)への理解が普及してきた現在においてもなお「借金は悪」なのですから、当時においても家計簿財政論が幅を利かしていたのは当然のことです。
日銀の『資金循環統計』をみますと、昭和55(1980)年時点の日本政府(中央政府)の財投債を含む国債発行残高は52.5兆円でしたが、令和2(2020)年時点のそれは929.1兆円となっており約15倍にまで増えました。
たしかに政府債務は増え続けたことになります。
おなじみ財政破綻論者たちの主張によれば、このままでは日本政府は破綻して国債は紙切れ同然になってしまうのだそうです。
このことを信じきっている日本国民はけっして少なくありません。
ただ、明治政府がスタートしたころ、即ち明治5(1872)年時点の日本政府の債務残高と現在のそれを比較してみますと、冒頭のグラフのとおり3973万倍にまで膨れ上がっています。
物価の影響を除いた実質値でみても明治18(1885)年比で564倍です。
それでも、日本政府が発行する国債金利はゼロ%、インフレ率を示す消費者物価指数(前年同月比)もゼロ%の状態が続いており、まったく破綻の気配をみせていません。
いったい、いつになったら日本政府は破綻するのでしょうか。
残念ながら、ぜったいに破綻論者たちは破綻の時期について数字と根拠をもって示してくれない。
むろん、主権通貨国である日本政府の破綻(デフォルト)などあり得ないのですから、示せるはずもない。